あなたが運命の番ですか?
真相
昼休み終了の10分前、私たちは中庭で別れ、各々の教室へと戻っていく。
「さっき、真琴と喋ってたデリケートな話って、橘先輩のこと?」
教室へ戻る道中、鏑木さんが質問する。
「うん、そうだよ」
「上手く誤魔化せた?」
「うん……、たぶん……」
私は少し不安になりながら、恐る恐る首を縦に振る。
上手く誤魔化せたと思いたい。
先週の木曜日の夜、優一郎くんから電話が掛かってきた。
そして、優一郎くんは開口一番、私に謝罪した。
私が戸惑いながら訳を聞くと、優一郎くんは「星宮さんに橘先輩の話をしたこと」「背中を押すだけのつもりが、星宮さんがあまりにも煮え切らない態度を示すので、彼女を焚きつけるためにハッタリをかましてしまったこと」を説明した。
そのハッタリというのが「優一郎くんが橘先輩をもう1人の番にしようと考えている」である。
「もちろん、橘くんとは中等部時代に友達だっただけで、一切疚しいことなんてなかったよ!?それに、俺の番は寿々ちゃんだけだから!お願い!信じて!!!」
早口で弁明する優一郎くんに圧倒され、私は「大丈夫、疑ってないから」と返した。
優一郎くんって、こんなに早口で喋れるんだ……。
「それで……、寿々ちゃんに1つお願いがあるんだ。今後、星宮さんに橘くんの件を聞かれたら、口裏を合わせてくれない?」
「えぇっ!?私が!!?」
「うん。正直、つい口走っただけのハッタリだったんだけど、星宮さんは本気で信じてるみたいなんだ。あの後から、星宮さんは俺に対抗心を燃やしてる感じがする。星宮さんは自分の気持ちに自信がないだけで、気持ちを自覚できれば行動に移せると思う。このハッタリがきっかけで、星宮さんは自分の気持ちを自覚できるかもしれない」
「な、なるほど……」
「ごめんね、巻き込んじゃって……。今回の件は、必ず何かしらでお礼はするから」
――と、いうことがあって、先ほどの星宮さんとのヒソヒソ話に至ったのだ。
一応、変な誤解が生まれないように、この件は鏑木さんにも話しておいた。すると、鏑木さんは「流石演劇部。役者だね」と笑っていた。
正直、優一郎くんに話を聞いた時は面食らったし、上手く口裏を合わせられるか心配だった。現に、さっき星宮さんに質問された時、私はうっかりしていて反応が遅れてしまった。
――嫌、かもしれない。
あの時の星宮さんが浮かべた表情には、「嫉妬」が滲んでいた。
案外、良い作戦なのかもしれない。
「さっき、真琴と喋ってたデリケートな話って、橘先輩のこと?」
教室へ戻る道中、鏑木さんが質問する。
「うん、そうだよ」
「上手く誤魔化せた?」
「うん……、たぶん……」
私は少し不安になりながら、恐る恐る首を縦に振る。
上手く誤魔化せたと思いたい。
先週の木曜日の夜、優一郎くんから電話が掛かってきた。
そして、優一郎くんは開口一番、私に謝罪した。
私が戸惑いながら訳を聞くと、優一郎くんは「星宮さんに橘先輩の話をしたこと」「背中を押すだけのつもりが、星宮さんがあまりにも煮え切らない態度を示すので、彼女を焚きつけるためにハッタリをかましてしまったこと」を説明した。
そのハッタリというのが「優一郎くんが橘先輩をもう1人の番にしようと考えている」である。
「もちろん、橘くんとは中等部時代に友達だっただけで、一切疚しいことなんてなかったよ!?それに、俺の番は寿々ちゃんだけだから!お願い!信じて!!!」
早口で弁明する優一郎くんに圧倒され、私は「大丈夫、疑ってないから」と返した。
優一郎くんって、こんなに早口で喋れるんだ……。
「それで……、寿々ちゃんに1つお願いがあるんだ。今後、星宮さんに橘くんの件を聞かれたら、口裏を合わせてくれない?」
「えぇっ!?私が!!?」
「うん。正直、つい口走っただけのハッタリだったんだけど、星宮さんは本気で信じてるみたいなんだ。あの後から、星宮さんは俺に対抗心を燃やしてる感じがする。星宮さんは自分の気持ちに自信がないだけで、気持ちを自覚できれば行動に移せると思う。このハッタリがきっかけで、星宮さんは自分の気持ちを自覚できるかもしれない」
「な、なるほど……」
「ごめんね、巻き込んじゃって……。今回の件は、必ず何かしらでお礼はするから」
――と、いうことがあって、先ほどの星宮さんとのヒソヒソ話に至ったのだ。
一応、変な誤解が生まれないように、この件は鏑木さんにも話しておいた。すると、鏑木さんは「流石演劇部。役者だね」と笑っていた。
正直、優一郎くんに話を聞いた時は面食らったし、上手く口裏を合わせられるか心配だった。現に、さっき星宮さんに質問された時、私はうっかりしていて反応が遅れてしまった。
――嫌、かもしれない。
あの時の星宮さんが浮かべた表情には、「嫉妬」が滲んでいた。
案外、良い作戦なのかもしれない。