あなたが運命の番ですか?

文化祭(猪三郎物語)

 文化祭初日の午後、吹奏楽部の演奏が終わり、次はいよいよ演劇部の公演が始まる。
 昨日、優一郎くんには一緒に下校する時、星宮さんには昼休みの時、それぞれに「頑張ってね、楽しみにしてる」と直接伝えた。

 私は演劇部の公演も、2人の演技も観るのが初めてだ。
 私が出演するわけでもないのに、昨日の夜から緊張して落ち着かない。
 ただの観客である私ですらこんなにもソワソワしているならば、実際に舞台に立つ2人の緊張はどれほどのものだろうか。しかも、主役だなんて――。

「只今より、演劇部による『猪三郎物語』の公演を開始します」
 そうこうしていると、体育館にアナウンスが響き渡り、照明が落とされて室内は暗くなり始める。
 そして、ゆっくりと幕が上がる。
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