あなたが運命の番ですか？

『此花！私はこんなにも君を愛している……。それなのに、なぜ君は振り向いてくれないんだ！？』
　ついに痺れを切らした小十郎は、此花の手を掴んで迫る。
『いけません！小十郎様……！』
『どうしてなんだ……。私が……、私が女――半陰陽だからか？だから、君は私を拒絶するんだな？』
『いいえ、そうではありません。小十郎様が女子(おなご)だからでも、半陰陽だからでもありません……。私には心に決めた殿方が……、猪三郎様がいるからです！』
　きっぱりと此花がそう言い放つと、小十郎は生気が抜けた様子で此花の手を離す。

『……なるほど。では、こうしよう。猪三郎がいなければ、私と夫婦(めおと)になってくれるか？』
　小十郎は、不気味なくらい冷静な口調で言い放つ。
『えっ……。こ、小十郎様……。一体、何を……？』
『夫婦になってくれるんだな？それならば、私は猪三郎を亡き者にしてやろう』
　小十郎は決心がついた様子で吐き捨てると、その場を立ち去り、此花は泣き崩れた。