あなたが運命の番ですか?
ラストシーン、猪三郎と小十郎が刀を携えて対峙する。
『私は今までの人生で、本当に欲しい物は1度も手に入らなかった。私だってね、年頃の娘たちのように、華やかな着物を着て綺麗なかんざしを付けたかった。だけど、与えられたのは「小十郎」という名と刀……。君が羨ましいよ、猪三郎。地位も名誉も、愛する女さえも手に入れた君が……』
小十郎は穏やかな口調で語る。しかし、その穏やかな口調の中に、煮えたぎるような憎しみが見え隠れする。
そして、小十郎は腰の刀を引き抜き、それを猪三郎に向けて構えた。
『だけど、彼女だけは誰にも渡さない。君を斬り捨ててでも、彼女を手に入れてみせる――』
真っ直ぐで、一切の迷いのない小十郎の言葉。
小十郎の真剣で危うい感情が痛いほど伝わってきて、私は――、観客たちは目が離せなくなる。
『君は、私にとってかけがえのない友だ。そんな君と真剣を交えたくない。だが、此花を渡したくないという気持ちは、私も同じだ』
そう言って、猪三郎も自身の刀を抜く。
『受けて立とう――』
猪三郎の言葉によって、客席にも緊張感が走る。
『いざ――』
互いに刀を向け合った2人は、一斉に斬り掛かる。
小柄で華奢な小十郎は、大柄な猪三郎に対して果敢に攻める。何度も斬り掛かり、それを猪三郎が防御する。
その一方で、猪三郎はまだ踏ん切りがつかないのか、防御ばかりで攻撃しようとはしない。
『どうした!?受け身ばかりでは私を倒すことはできないぞ!それとも、君は私のことを「たかが女」と舐めているのか!!?』
鍔迫り合いをしながら、小十郎は苛立ったように挑発する。
『私は、君を女だと思ったことは1度もない。君が小十郎となったあの日から――』
猪三郎は、自身の言葉によってようやく火が付いたのか、次第に攻撃の姿勢を取るようになる。
猪三郎が攻撃の姿勢を取り始めると、徐々に小十郎は押され気味になった。
しかし、防戦一方になることはなく、小十郎は隙をついて攻撃を仕掛ける。
すさまじい迫力と、息もつかない攻防戦――。これが舞台であることを忘れてしまうほどの2人の迫真の演技と殺陣に、観客はのめり込む。
2人の間には、明確な体格差がある。しかし、そんなものは関係ないと言わんばかりの戦い。
小十郎は自分よりもずっと身体の大きい猪三郎に一切怯むことなく、むしろ小柄な身体を生かして何度も相手の懐に入ろうとする。自分よりも明らかに強者である猪三郎に対して、果敢に立ち向かう小十郎の姿は、まさに彼の闘志と情熱を物語っている。
そして、猪三郎は自分よりも小柄な小十郎に一切手加減することなく、力強く刀を振るう。それが、小十郎への敬意とでも言うかのように――。
永遠に続くかのように思われた戦いにも、終わりの瞬間が訪れる。
2人の刃が交わった瞬間、猪三郎の力強い刃に押されて、小十郎が一瞬よろけた。
その瞬間を猪三郎は見逃さず、小十郎の空いた胴体目掛けて刀を振るった。
そして、小十郎は崩れるように膝をつく。
激しい戦いが止み、しばしの静寂に包まれる。
『――やはり、君には敵わないな』
小十郎は弱々しく掠れた声で呟くと、その場に倒れた。
『さらばだ、我が友よ――』
猪三郎は小十郎に背を向けたまま別れを告げ、刀を鞘に納めた。
そして、ゆっくりと幕が下りていく――。
『私は今までの人生で、本当に欲しい物は1度も手に入らなかった。私だってね、年頃の娘たちのように、華やかな着物を着て綺麗なかんざしを付けたかった。だけど、与えられたのは「小十郎」という名と刀……。君が羨ましいよ、猪三郎。地位も名誉も、愛する女さえも手に入れた君が……』
小十郎は穏やかな口調で語る。しかし、その穏やかな口調の中に、煮えたぎるような憎しみが見え隠れする。
そして、小十郎は腰の刀を引き抜き、それを猪三郎に向けて構えた。
『だけど、彼女だけは誰にも渡さない。君を斬り捨ててでも、彼女を手に入れてみせる――』
真っ直ぐで、一切の迷いのない小十郎の言葉。
小十郎の真剣で危うい感情が痛いほど伝わってきて、私は――、観客たちは目が離せなくなる。
『君は、私にとってかけがえのない友だ。そんな君と真剣を交えたくない。だが、此花を渡したくないという気持ちは、私も同じだ』
そう言って、猪三郎も自身の刀を抜く。
『受けて立とう――』
猪三郎の言葉によって、客席にも緊張感が走る。
『いざ――』
互いに刀を向け合った2人は、一斉に斬り掛かる。
小柄で華奢な小十郎は、大柄な猪三郎に対して果敢に攻める。何度も斬り掛かり、それを猪三郎が防御する。
その一方で、猪三郎はまだ踏ん切りがつかないのか、防御ばかりで攻撃しようとはしない。
『どうした!?受け身ばかりでは私を倒すことはできないぞ!それとも、君は私のことを「たかが女」と舐めているのか!!?』
鍔迫り合いをしながら、小十郎は苛立ったように挑発する。
『私は、君を女だと思ったことは1度もない。君が小十郎となったあの日から――』
猪三郎は、自身の言葉によってようやく火が付いたのか、次第に攻撃の姿勢を取るようになる。
猪三郎が攻撃の姿勢を取り始めると、徐々に小十郎は押され気味になった。
しかし、防戦一方になることはなく、小十郎は隙をついて攻撃を仕掛ける。
すさまじい迫力と、息もつかない攻防戦――。これが舞台であることを忘れてしまうほどの2人の迫真の演技と殺陣に、観客はのめり込む。
2人の間には、明確な体格差がある。しかし、そんなものは関係ないと言わんばかりの戦い。
小十郎は自分よりもずっと身体の大きい猪三郎に一切怯むことなく、むしろ小柄な身体を生かして何度も相手の懐に入ろうとする。自分よりも明らかに強者である猪三郎に対して、果敢に立ち向かう小十郎の姿は、まさに彼の闘志と情熱を物語っている。
そして、猪三郎は自分よりも小柄な小十郎に一切手加減することなく、力強く刀を振るう。それが、小十郎への敬意とでも言うかのように――。
永遠に続くかのように思われた戦いにも、終わりの瞬間が訪れる。
2人の刃が交わった瞬間、猪三郎の力強い刃に押されて、小十郎が一瞬よろけた。
その瞬間を猪三郎は見逃さず、小十郎の空いた胴体目掛けて刀を振るった。
そして、小十郎は崩れるように膝をつく。
激しい戦いが止み、しばしの静寂に包まれる。
『――やはり、君には敵わないな』
小十郎は弱々しく掠れた声で呟くと、その場に倒れた。
『さらばだ、我が友よ――』
猪三郎は小十郎に背を向けたまま別れを告げ、刀を鞘に納めた。
そして、ゆっくりと幕が下りていく――。