あなたが運命の番ですか?

文化祭(公演終了後)

「お疲れ様!みんな良かったよぉ!!!」
 終幕後、舞台袖に役者も裏方も含めて部員全員が集まったところで、部長が興奮気味な様子でみんなに拍手を送る。

 ああ、アタシの初舞台、とうとう終わっちゃったんだ……。
 部長の賛辞によって、身体の力が一気に抜けていく。それと同時に、心にポッカリと穴が開いたような寂しさを感じる。
 
 昨日の夜から今朝にかけては緊張で吐き気が止まらなかったが、本番中は平常心を保てた。正確に言うと、演じるのに必死で、緊張している暇がなかったのだ。
 目の前で、稽古の時よりも圧倒的な演技力を見せつけてくる前園先輩。そんな先輩に、どうしても負けたくないという思いで、必死に食らいついた。
 稽古し始めの頃はあんなに怖かった殺陣も、「前園先輩に負けたくない」と思えば、怖さなんて微塵も感じない。
 
「特に、前園くんと星宮さんは、本当にお疲れ様。2人とも今までで1番良い演技だったよ。それに、2人が頑張ってくれたおかげで、部員全員の士気が上がってより良い舞台になったと思う」
「部長……、ありがとうございます!!!」
 部長の言葉に感動し、アタシは深々と頭を下げる。それに続いて、前園先輩も「ありがとうございます」と頭を下げた。
 そして、他の部員たちも「良かったよ!」「最後の殺陣、2人ともすごかった」と口々に褒めてくれた。
 
「うぅ……。これで俺はもう、何も思い残すことはないよ……」
 部長は目に涙を溜めながら呟く。すると、2年生がすかさず「部長、おじいちゃんみたいなこと言わないでくださいよ」と茶化し、舞台袖は笑い声に包まれた。
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