あなたが運命の番ですか?

文化祭(告白)

 文化祭2日目の午前中、模擬店や展示などが立ち並んだ校内は、大勢の生徒や保護者で賑わっていた。
 その中を、アタシはキョロキョロと辺りを見渡しながら歩いている。
 
 昨日の放課後、アタシは橘先輩に「先輩に話したいことがあります。明日、どこかで会えませんか?」とメッセージを送った。しかし、返信は未だない。
 そして、アタシは今、橘先輩を探している。

 アタシはとりあえず、園芸部の部室へ向かった。
 華やかに飾りつけされた部室内には、マリーゴールドやコスモスが咲いているプランターが並べられ、長机には商品らしいミニトマトやキュウリが置かれている。
 部室内には主婦らしき女性が3人と、部長らしきオメガの女子部員、そして春川さんがいた。

「あれ?星宮さん?」
 春川さんがアタシに気づいた。
「春川さん、あの……、橘先輩って、今……」
 アタシは恐る恐る尋ねる。
「橘先輩は、午後から店番の予定だけど、今はどこにいるのか分からない」
 春川さんは申し訳なさそうに、首を横に振る。
「そ、そっかぁ……」
 アタシは肩を落とす。

 どうしよう。午後になってから、また来ようかな。
 でも、今すぐ会いたい。午後になるまで待っていられない。
 とりあえず、午前中は他のところを探してみよう。

「ありがとう、春川さん。それじゃあ――」
 アタシはそれだけ言い残して、その場を去ろうとした。
「あっ!星宮さん!」
 すると、春川さんは慌ててアタシを呼び止める。アタシは立ち止まり、振り返った。
 
「頑張ってね」
 春川さんは顔の横でギュッと握り拳を作り、笑顔でアタシにエールを送ってきた。
 
 春川さんには、アタシの橘先輩への気持ちを伝えていない。だけど、彼女は察してくれているようだ。
 春川さんにも、いろいろと心配を掛けちゃったなぁ。
 
「ありがとう!」
 アタシはそう言い残して、その場を後にした。
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