あなたが運命の番ですか?

前園優一郎

「なあ、聞いたか?今年入ったオメガの子、女子だってさ」
「オメガは、ほとんどが女子だろ。橘が珍しいだけだよ」
 朝、教室へ入って自分の席へ向かう途中、クラスメイトの話し声が俺の耳に入ってきた。

「結構、可愛いらしいよ」
「マジで?俺、声掛けてみよっかな?」
「止めとけって。怖がられて、先生にチクられたら怒られるぞ」
 どうやら、春川さんのことを噂しているようだ。

 お前らが噂している子、俺の()()()なんだけど……。
 俺はそっと心の中だけで呟いた。
 
 アルファ特進クラスの人間にとって、数少ないオメガの生徒は注目の的である。
 そして、アルファにとって、番は一種のステータスだ。
 アルファに比べてオメガは数が少なく、おまけにアルファは番を複数人持てるため、番を持てるアルファは数が限られている。さらに、オメガが番に選ぶアルファは、社会的地位が高かったり、実家が名家だったりすることが多い。
 そういった背景から、「番がいる=スペックの高いアルファ」という構図が生まれているのだ。そして、番の数が多ければ多いほどスペックが高い、という考え方もされている。
 俺は、こういったオメガを高級外車や宝石のように捉えるアルファの考え方が、好きではない。

 俺が1年の時、クラスメイトの1人が他校のオメガと婚約したことを、教室で自慢げに話しているのを見たことがある。
 周りはそいつに対して羨望の眼差しを向けていたが、その自己顕示欲と承認欲求を剥き出しにした振る舞いに対して、俺は苦手意識を持った。
 
 俺は、婚約の話を誰にもしないつもりだ。
 俺は婚約者を、春川さんを自分の自己顕示欲と承認欲求の道具にしたくない。

「新1年のオメガの子も気になるけどさぁ、新1年のアルファ女子見た?すっげぇ美人じゃね?」
「あぁ、星宮だっけ?確かモデルかなんかだろ」
「はーん、なるほどねぇ。やっぱ、芸能人ってオーラが違うわ」
「何、お前。狙ってんの?」
「『ワンチャンないかなぁ?』とは思ってる」
「えー。でも、アルファの女子って、性格キツそうじゃね?ほら、青山(あおやま)会長みたいにさぁ」

 目移りの激しい奴らだな。
 俺はそんな感想を抱きながら、盗み聞きを止めた。
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