あなたが運命の番ですか?
「ねぇ、星宮さん」
「ん?」
 アタシたちは裸のまま、ベッドに横たわって互いの身体を抱きしめ合っている。
 
「本当に、僕なんかで良いの?」
 アタシの胸の中で、橘先輩は恐る恐る尋ねる。
「何回言ったら分かるんですか?『先輩じゃなきゃダメだ』って言ったじゃないですか」
 アタシは呆れながら笑う。

「先輩の方こそ、アタシなんかで良かったんですか?アタシの家、別にお金持ちってわけじゃないですし」
「……僕の方こそ、星宮さんじゃなきゃ嫌だよ……」
 橘先輩は親に甘える子供のように、ぎゅうっとアタシにしがみ付く。
「ふふっ、アタシだって、同じ気持ちですよ」
 アタシは優しく橘先輩の頭を撫でた。

「じゃあさ、僕のどこが好きなの?」
「えぇっ、どこって――」
 アタシは「うーん」と唸りながら考え込む。
 
「……顔?」
 アタシの返答に、橘先輩はやや不満げに「えー」と返した。
「僕って、別にイケメンじゃないでしょ?」
「うーん、確かにイケメンってわけじゃないですけど、可愛い顔してると思いますよ」
「可愛い、ねぇ」
 橘先輩はあんまり納得がいっていない様子だ。しかし、先輩の顔が好き、というのは嘘ではない。

「じゃあ、先輩はアタシのどこが好きなんですか?」
「え?顔」
 即答する橘先輩に、アタシは思わず吹き出す。
「えぇっ、一緒じゃないですかぁ」
「ふふっ、奇遇だね」
 橘先輩はクスクスと笑う。
 まあ、アタシの顔が良いっていうのは、自分でも認めている。

「……ねぇ、星宮さん」
「ん?何です?」
「……『千尋』って、呼んでほしい」
「えっ!?」
 
 アタシは驚いて、橘先輩の顔を覗き込んだ。すると、先輩は顔を赤くさせて、唇を噛みしめている。
「つ、付き合ってるんだから、『先輩』なんて、呼ばれたくない……。僕も、『真琴』って呼ぶから……」
 口をモゴモゴさせている橘先輩を見て、アタシは思わず笑みが零れる。

「いいですよ、千尋さん」
「えー、さん付けぇ?呼び捨てにしてよ」
「いやぁ、アタシ、人のこと呼び捨てにするの苦手で……」
 アタシは苦笑いする。
 
「じゃあ、せめて『くん』で呼んでよ」
「えぇっ!?……わ、分かりましたよ、……千尋、くん」
「敬語も禁止」
「うっ……、わ、分かった、よ……、千尋くん……」
 すると、千尋くんは満足げに笑った。
 
「うん、よろしくね。真琴」
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