あなたが運命の番ですか?

初デート☆

 文化祭から1週間が経った土曜日、私は駅前で優一郎くんを待っている。
 文化祭2日目で、私が「デートしたい」と言ったところ、2人で映画を観に行くこととなった。
 
 一応、お母さんにデートのことを話したところ、快諾してもらえた。しかも、デートの時に着ていく服まで一緒に選んでくれた。
 私が誰かとデートをすることに対して、お母さんが快く思ってくれるのは、きっと相手が優一郎くんだからだろう。
 しかし、お父さんは「そうか、寿々がデートするのか」と肩を落としていた。それに対して、お母さんは「婚約してるのに、今更何言ってんの」と笑っていた。

 待ち合わせ時間まで、まだ10分以上ある。私は、今朝からソワソワして居ても経ってもいられず、予定よりもかなり早く家を出てしまった。
 
 私はふと、駅前にあるコンビニの窓ガラスに反射した自分と目が合った。
 水色と白のストライプのワンピースを着て、クリーム色のショルダーバッグを持った私。
 そう言えば、このワンピース、小学校6年生の時に買ってもらったんだっけ?流石に、ちょっと子供っぽいかな?
 
 私は今までほとんどメイクをしたことがなかったのだが、今日はドラッグストアで買ってきたピンクの口紅を付けている。
 私なりに頑張ってオシャレしてみたが、何だか段々不安になってきた。
 幻滅されたら嫌だな……。

「あれ?もう着いてたんだ」
「わっ――!?」
 ガラスに反射した自分と睨めっこしていると、突然真横から声を掛けられ、私は驚いて飛び退く。
 声の主は、優一郎くんだった。
 
「ごめんごめん、驚かせちゃったね」
 優一郎くんは困ったように笑う。
「あ……、ううん。私がボーッとしてただけだから」
 私は咄嗟にそう返した。

 優一郎くんは青色のポロシャツに、白のジーンズを身に着けていて、普段より何だか大人っぽい雰囲気だ。
 よく見ると、ポロシャツの胸元には、私でも知っているブランドのロゴが刺繍されている。このブランドって、結構高級なやつじゃなかったっけ?

「予定よりも結構早めに着いたつもりだったんだけど、先に寿々ちゃんがいてびっくりした」
「あはは、今朝からソワソワしちゃって、家にいても落ち着かないから……」
 私は恥ずかしくて、顔を(うつむ)かせてしまう。
「ふふっ、俺も正直、昨日は全然眠れなかった」
 優一郎くんも照れ臭そうに返す。
 私は「眠れなかった」の一言に、胸が高鳴った。
 
「それじゃあ、行こうか」
 優一郎くんは、私に右手を差し出す。
「うん」
 私は差し出された手を取り、指を絡め合った。
< 168 / 195 >

この作品をシェア

pagetop