あなたが運命の番ですか?
「ただいまー」
アタシは自宅の玄関を開け、千尋くんと共に中へ入る。
「おかえりなさい」
すると、リビングからママが出てきて、こちらに駆け寄ってくる。
ママは目の前までやって来ると、千尋くんを見て、畏まったように背筋を伸ばした。
「あっ……、えっと、はじめまして、真琴さんとお付き合いをさせていただいてます。橘千尋です。よろしくお願いします」
千尋くんはママに対して、うやうやしく頭を下げる。
「あらあら、いつもうちの娘がお世話になってます」
ママは来客向けの「おしとやかな母親」を装った振る舞いをする。
アタシが靴を脱いで玄関に上がろうとすると、突然ママが「あっ、そうだ」と言い出した。
「実はー、2人に謝っておかなきゃいけないことがあるのよ……」
「えっ?何?」
申し訳なさそうに眉を八の字にさせているママの後ろで、誰かがリビングの扉からニュッと顔を出したのが見えた。
そして、アタシはその人物と目が合った瞬間、仰天した。
「お兄ちゃんっ!!?」
そこにいたのは、実家を出て地方で下宿しているはずの兄・聖斗だった。
「よぉ、真琴。久しぶりだな。正月以来か」
お兄ちゃんはコタロウを抱きかかえながら、アタシたちの元へと歩み寄る。
コタロウはお兄ちゃんに喉を撫でられて、ゴロゴロと鳴いている。コタロウは昔から、お兄ちゃんにだけはやたらと懐く。
「いつ帰ってたの!?」
「え?さっき」
お兄ちゃんはあっけらかんと答える。
「な、何でぇ?」
「母さんから、お前が彼氏を実家に連れてくるって聞いて、俺も会いたいから、大急ぎで新幹線に乗って帰ってきたんだよ」
「えっ……、もしかして、わざわざそのために帰ってきたの?」
「当たり前だろぉ。だって、気になるじゃん。お前の彼氏」
お兄ちゃんは大口を開けて豪快に笑う。その隣で、ママは呆れたようにため息を吐いている。
お兄ちゃんは子供の頃から、こんな感じで突飛な行動を取って周りを困惑させる人だ。
そして、お兄ちゃんはジーッと千尋くんの顔を睨み始めた。それに対して、千尋くんは動揺して後退る。
「ははーん、なるほど。やっぱ、真琴の趣味って一貫してるなぁ。あの男の子に似てるな。ほら、名前なんだっけ?真琴が好きなアイドルの――」
「ちょっと、お兄ちゃん!?」
アタシは今まで、1度も千尋くんの前でシオンくんの話をしたことがない。それなのに、急にシオンくんの話をしようとするお兄ちゃんに、アタシは動揺する。
「もしかして、この子?お前が週刊誌に撮られた――」
「コラッ!聖斗!!!」
デリカシーのない言動を続けようとするお兄ちゃんは、ママに思いっきり後頭部を殴られ、「痛ぇっ!?」と叫んだ。
コタロウはお兄ちゃんが殴られる直前に、お兄ちゃんの腕からヒョイと飛び出して、トコトコとリビングへ戻っていった。
そして、お兄ちゃんはママに首根っこを掴まれ、リビングへと引きずられていく。
嵐のような時間が過ぎ去った後、千尋くんのほうを見ると、彼は顔を引き攣らせていた。
「ごめんね。うちのお兄ちゃん、悪い人じゃないんだけど、とんでもないノンデリで……。思ったことを何でも言っちゃう人なの……」
アタシが週刊誌に撮られて大変だった時も、お兄ちゃんは「お前、ついに彼氏が出来たのか」とマイペースなメッセージを送ってきた。
その時のアタシは、お兄ちゃんに構っている余裕がなく、既読無視をした。いや、未だに既読無視のままだ。
「いや、全然大丈夫だよ……。賑やかな家族だね」
千尋くんは苦笑いをした。
アタシは自宅の玄関を開け、千尋くんと共に中へ入る。
「おかえりなさい」
すると、リビングからママが出てきて、こちらに駆け寄ってくる。
ママは目の前までやって来ると、千尋くんを見て、畏まったように背筋を伸ばした。
「あっ……、えっと、はじめまして、真琴さんとお付き合いをさせていただいてます。橘千尋です。よろしくお願いします」
千尋くんはママに対して、うやうやしく頭を下げる。
「あらあら、いつもうちの娘がお世話になってます」
ママは来客向けの「おしとやかな母親」を装った振る舞いをする。
アタシが靴を脱いで玄関に上がろうとすると、突然ママが「あっ、そうだ」と言い出した。
「実はー、2人に謝っておかなきゃいけないことがあるのよ……」
「えっ?何?」
申し訳なさそうに眉を八の字にさせているママの後ろで、誰かがリビングの扉からニュッと顔を出したのが見えた。
そして、アタシはその人物と目が合った瞬間、仰天した。
「お兄ちゃんっ!!?」
そこにいたのは、実家を出て地方で下宿しているはずの兄・聖斗だった。
「よぉ、真琴。久しぶりだな。正月以来か」
お兄ちゃんはコタロウを抱きかかえながら、アタシたちの元へと歩み寄る。
コタロウはお兄ちゃんに喉を撫でられて、ゴロゴロと鳴いている。コタロウは昔から、お兄ちゃんにだけはやたらと懐く。
「いつ帰ってたの!?」
「え?さっき」
お兄ちゃんはあっけらかんと答える。
「な、何でぇ?」
「母さんから、お前が彼氏を実家に連れてくるって聞いて、俺も会いたいから、大急ぎで新幹線に乗って帰ってきたんだよ」
「えっ……、もしかして、わざわざそのために帰ってきたの?」
「当たり前だろぉ。だって、気になるじゃん。お前の彼氏」
お兄ちゃんは大口を開けて豪快に笑う。その隣で、ママは呆れたようにため息を吐いている。
お兄ちゃんは子供の頃から、こんな感じで突飛な行動を取って周りを困惑させる人だ。
そして、お兄ちゃんはジーッと千尋くんの顔を睨み始めた。それに対して、千尋くんは動揺して後退る。
「ははーん、なるほど。やっぱ、真琴の趣味って一貫してるなぁ。あの男の子に似てるな。ほら、名前なんだっけ?真琴が好きなアイドルの――」
「ちょっと、お兄ちゃん!?」
アタシは今まで、1度も千尋くんの前でシオンくんの話をしたことがない。それなのに、急にシオンくんの話をしようとするお兄ちゃんに、アタシは動揺する。
「もしかして、この子?お前が週刊誌に撮られた――」
「コラッ!聖斗!!!」
デリカシーのない言動を続けようとするお兄ちゃんは、ママに思いっきり後頭部を殴られ、「痛ぇっ!?」と叫んだ。
コタロウはお兄ちゃんが殴られる直前に、お兄ちゃんの腕からヒョイと飛び出して、トコトコとリビングへ戻っていった。
そして、お兄ちゃんはママに首根っこを掴まれ、リビングへと引きずられていく。
嵐のような時間が過ぎ去った後、千尋くんのほうを見ると、彼は顔を引き攣らせていた。
「ごめんね。うちのお兄ちゃん、悪い人じゃないんだけど、とんでもないノンデリで……。思ったことを何でも言っちゃう人なの……」
アタシが週刊誌に撮られて大変だった時も、お兄ちゃんは「お前、ついに彼氏が出来たのか」とマイペースなメッセージを送ってきた。
その時のアタシは、お兄ちゃんに構っている余裕がなく、既読無視をした。いや、未だに既読無視のままだ。
「いや、全然大丈夫だよ……。賑やかな家族だね」
千尋くんは苦笑いをした。