あなたが運命の番ですか?
「春川さんって、家どこなの?」
 体操服に着替えて花壇へ移動している最中、橘先輩が尋ねてきた。
「〇〇市の✕✕町です」
「結構遠いね。電車?」
「はい、そうです」
 私の自宅の最寄り駅は、学校から電車で15分のところにある。
「電車通学って、痴漢とか怖くない?」
「あー、でも、いつも女性専用車両に乗ってるので大丈夫ですよ」
「あっ、そっか……」
 橘先輩はそう言って苦笑いする。

 そう言えば、オメガ男性も痴漢の被害に遭うのだろうか。
 私は女性専用車両以外の満員電車に乗ると、高確率で痴漢に遭う。「私が」というよりも、オメガは痴漢に遭いやすい。
 それは男性も同じなのだろうか。橘先輩の痴漢を懸念する口ぶり的に、おそらくそうなのだろう。
 橘先輩もそうだが、オメガ男性は小柄でアルファやベータの男性に比べて丸みを帯びた体型をしている。正直、遠目から見るとスレンダーなベータ女性とそんなに変わらない外見だ。
 
 だけど、オメガ男性は女性専用車両に乗れるのだろうか。
 法律上は問題ないだろうが、オメガと言えど男性なので、周りの女性の目を気にして乗りづらいのではないか?
 それならば、オメガ男性たちはどうやって対処しているのだろうか。

「橘先輩は、どこに住んでるんですか?」
「中等部の校舎から歩いて5分のところ。だから、歩き」
「えっ!?そんな近いんですか?」
「ふふっ、ちょっとくらいの寝坊だったら、ダッシュで間に合うよ」
 橘先輩はクスクスと笑う。
 橘先輩って、初めは不愛想な感じの人かと思っていたけど、話してみると結構気さくな人だな。

「今日は2人だけだから、草むしりはいつもより『あらかた』で良いよ。遅くまでやってると川田先生に怒られるし」
 その後、2人で手分けをして花壇とプランターの手入れをした。
 作業をしている間、私は頭がぼんやりとして、身体が火照っていることに気づいた。
 何だろう?熱かな?
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