あなたが運命の番ですか?

宝月学園

 宝月(ほうげつ)学園。――この地域で知らない人はいない名門校。
 アルファのみが所属する特進クラスが1つ、ベータのクラスが5つ、計6クラスが1学年に存在する。
 学費が高額なので在校生の大半が資産家のお嬢様やお坊ちゃまだが、オメガは学費が全額免除されるという仕組みがある。そのため、毎年オメガが1人入学し、ベータのクラスに配属させられる。そして、今年のその1人が私だ。

 中学2年生の冬、私が通う中学校に宝月学園の先生がやって来て、「ぜひ我が校に入学しないか?」と提案してきた。
 同席していたお母さんは、「アルファがいる学校に通うだなんてとんでもない」と激昂したが、先生は「アルファ特進クラスとベータクラスは校舎が別々である」「毎年1人はオメガが入学するため、オメガにとって過ごしやすい環境が整っている」と食い下がってきたのだ。
 その様子を見た私は、先生が「必ず私を入学させなくてはならない」という使命感に駆られているように感じた。
 
 お母さんは断固として拒否していたが、私は在校生に少なくとも2人はオメガの生徒がいるという点に惹かれて入学を決意した。
 私が通っていた小・中学校には、私以外にオメガはいなかった。そのせいで、いつも孤独を感じていた。
 もし、同じ学校に他のオメガがいれば、この孤独感が少しでも和らぐのではないかと思ったのだ。
 それに、話してみたかった。私以外のオメガに――。

 私が「宝月に入学したい」と言ってもお母さんはなかなか納得してくれなかったが、お父さんにも説得を手伝ってもらい、何とか宝月学園への入学を許された。
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