あなたが運命の番ですか？

　昼休み、アタシは裏庭のベンチに座って、ボーッと宙を見つめる。

　あれから土日を挟んで月曜日、その間ずっと橘先輩のことが頭から離れない。
　今朝だって、アタシは橘先輩の夢を見て夢精した。
　
　あの後、アタシはいつの間にか演劇部の部室にいて、前園先輩と大道具の準備をしていた。
　正直、あの状態からどうやって部室へ向かったのか全く覚えていない。
　全て夢だったのではないかと思いたかったが、匂いも、感触も、鮮明に覚えている。
　
　あれからずっと頭がボーッとして何事にも集中できず、前園先輩からは「気分でも悪いの？」と尋ねられ、両親や雑誌の撮影スタッフさんからも心配された。
　それに対して、アタシは必死に「何でもない」と誤魔化した。

「どうしたの？何かあった？」
　そして、朱音ちゃんにも心配されてしまった。
「……聞かないで」
　アタシは頭を抱えながら、言葉を絞り出す。
　朱音ちゃんに「何でもない」と言っても、すぐに嘘だと見破られてしまうため、「聞かないで」と答えるしかない。
「朱音ちゃんには嫌われたくない……」