あなたが運命の番ですか?

橘千尋

 星宮さんを見送った後、僕は家の中に戻った。
 目の前には、缶ビールを浴びるように飲む母親の後ろ姿がある。

 普段は家にいないのに、急に帰ってくるよなぁ……。
 さっきみたいな状況、最初は気まずかったはずなのに、いつの間にか慣れてしまった。
 こんなこと、普通じゃないのは自分が1番よく分かっている。

「母さん、そんなに飲んだら身体壊すよ」
 僕は母さんの手から缶ビールを取り上げようとする。
「うるさいなぁ」
 母さんは取り上げようとする僕の手を掴んで抵抗する。
 しかし、僕は何とか強引に缶ビールを取り上げることに成功する。
 
「何すんの!?」
 母さんは椅子から立ち上がって、僕を睨みつける。
 僕の顔を見た母さんは、ハッとしたような表情を浮かべた。
「……瑞希(みずき)くん」
 すると、今度はボロボロと涙を流し始め、僕に縋り付いてきた。
「瑞希くん、どうして私を置いて行ったの?一緒に苦しんでくれるって約束したのに……」
 僕に縋り付きながら、弱々しい声で泣きじゃくる母さんを見て、僕は「また始まった」とげんなりする。

「母さん、僕だよ。千尋だよ……」
 僕は、――()()()じゃないよ。
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