あなたが運命の番ですか?

もう1人の番

「あれ?母さん、今から出掛けるの?」
 とある休日の昼過ぎ、俺は廊下で身支度を整えた亜紀母さんと鉢合わせた。
「ああ、うん。ちょっとね」
 亜紀母さんはそれだけ言うと、俺の前を通り過ぎようとする。
「……最近、1人で出掛けることが多いね」
 俺は()()()()()つもりで、そう言った。
 すると、亜紀母さんは一瞬ばつの悪そうな顔をした。

 亜紀母さんは仕事が忙しく、完全な休日はたまにしかない。
 そのため、亜紀母さん曰く、休日は家族サービスに費やすように心掛けているそうだ。
 だから、休日は伽耶母さんと2人か、もしくは俺も交えて3人で外出することが多い。
 しかし、ここ数ヶ月くらい、亜紀母さんは頻繁に1人でどこかへ行くことが増えた。

「……ごめんね、優一郎。ほったらかしにして」
 亜紀母さんは申し訳なさそうに眉を八の字にする。
「それを言うんだったら、伽耶母さんに言いなよ」
 俺がそう言うと、亜紀母さんは一瞬ハッとしたような顔をした。
「……そうね。あなたの言う通りだわ」
 母さんはそれだけ言い残すと、その場を後にした。

 本当に、母さんはいつも1人でどこへ行っているのだろうか。
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