あなたが運命の番ですか?

園芸部へようこそ

 水曜日、私は部室棟の1階にある園芸部の部室を訪れた。
 少し狭い部室の中には、体操服を着た2人の生徒がいた。

「部活見学?」
 そう言って私のほうに駆け寄ってきたのは、私とほとんど同じ背格好で、セミロングヘアをハーフアップにした女子生徒だ。
「春川さん、だよね?川田先生から聞いてるよ。私、3年生で部長の(あずま)ゆかりです。よろしくね」
 東先輩はおっとりとした口調でニコニコと挨拶してくれる。
 そして、彼女の首には白の()()()()()()()()が付けられている。
 
「は、春川寿々です。よろしくお願いします」
 目の前に、私と同じオメガ女子がいる。
 オメガを街中で見かけたことはあるが、こうして会話をするのは初めてなので、私はドキドキしてしまう。

「で、あっちにいる()()が――」
 東先輩はそう言って、パイプ椅子に座っているもう1人の部員を指差す。
 そこにいたのは、黒いオメガチョーカーを付けた華奢で中性的な顔立ちの人物だった。

「2年生の橘千尋(たちばなちひろ)くん」
 
 えっ、男子!?
 私は初め、彼のことを女性だと勘違いしていた。
 オメガの男性は、全国で20人前後しかいない希少な存在だ。まさか宝月学園にいるなんて……。私はオメガ男性を生で見るのが初めてなので、思わず面食らう。

「……よろしく」
 橘先輩はそっぽを向いたまま、ぶっきらぼうに言う。
 東先輩に比べて、私は少し不愛想な印象を受けた。

 すると、東先輩は私に近寄ってきて、耳打ちを始める。
「ごめんねぇ、橘くん思春期だから、女の子と話すのがちょっと恥ずかしいみたいなの」
 東先輩はクスクスと笑う。
「全部聞こえてますよ」
 橘先輩はムスッとした表情を浮かべた。
< 6 / 195 >

この作品をシェア

pagetop