あなたが運命の番ですか?
徒競走と二人三脚が終わると、次は借り物競争だ。
体育祭では、ベータクラスは同学年の5クラスで各種目を競い合い、アルファクラスのみ学年対抗で争う。
しかし、借り物競争は運動神経に左右されない競技のため、男女もバース性も全て混合で行われる。
東部長曰く「借り物競争は、ほとんど余興みたいな競技だから、プレッシャー感じなくても大丈夫だよ」とのことだ。
あと、借り物のお題は学年ごとに難易度が違うらしく、1年生は比較的簡単で、3年生になると時間切れの失格者が続出するほど難しいらしい。
ルールは、スタート地点から30m先にある机の上の紙に書かれたお題の物や人(自分の持ち物や自分自身は不可)を5分以内に見つけて、一緒にゴールするというものだ。
まずは1年生から始まり、ピストルの音と共に、私を含めた6人が一斉に走り出す。
案の定、私は足が遅くてお題の紙を取るのが最後になってしまい、他の5人はもう既にお題の物を探しに行っている。
お題は早い者勝ちなので、私は机に残っている1枚の紙を取る。
私は、4つに折られた紙を広げる。
「えっ!!!!?」
私は、自分のお題を見て仰天した。
そのお題は、――「好きな人」だった。
私はパニックになる。
何このお題!?
「1年生のお題は簡単」って、嘘だったんですか、東部長!?
私が紙を握りしめたまま呆然と立ち尽くしていると、1人目のゴールを知らせるピストルが鳴った。
えっ!?もうゴールした人いるの!!?
私は切られたゴールテープを見た後、自分のクラスのテントに目を向ける。
「春川さん、頑張ってー!!!」
クラスの子たちが私に声援を送っているのが見える。そこには、鏑木さんの姿もある。
せめてゴールはしないと――。
失格で終わってしまったら、みんなに申し訳がない。
でも、「好きな人」って、どうすれば――。
必死に思考を巡らせると、脳裏に前園先輩の顔が浮かんだ。
そうだ。婚約者の前園先輩なら、「好きな人」と言っても納得してもらえるだろう。
私は、2年生のアルファクラスのテントに向かって走る。
テントの前に辿り着くと、キョトンとした顔で私のことを見てくるアルファ男子たちの中から、前園先輩の姿を探す。
そして、後方の隅にいる前園先輩と目が合った。
私が必死に目で訴えかけると、前園先輩は自分のことを指差しながら小首を傾げる。
それに対して私がコクコクと頷くと、前園先輩は前の人たちをかき分けてテントから出てきてくれた。
「先輩、一緒にゴールして!」
「うん、分かった」
私たちは簡潔にそれだけを話すと、ゴールに向かって走った。
背後では、何やらどよめくような声が聞こえる。
頑張ってゴールまで走ったが、私たちは結局ビリだった。
「ごめんね、せっかく一緒にゴールしてもらったのに……」
「ううん、気にしないで。十分頑張ってたよ」
謝る私を、前園先輩は慰めてくれた。
体育祭では、ベータクラスは同学年の5クラスで各種目を競い合い、アルファクラスのみ学年対抗で争う。
しかし、借り物競争は運動神経に左右されない競技のため、男女もバース性も全て混合で行われる。
東部長曰く「借り物競争は、ほとんど余興みたいな競技だから、プレッシャー感じなくても大丈夫だよ」とのことだ。
あと、借り物のお題は学年ごとに難易度が違うらしく、1年生は比較的簡単で、3年生になると時間切れの失格者が続出するほど難しいらしい。
ルールは、スタート地点から30m先にある机の上の紙に書かれたお題の物や人(自分の持ち物や自分自身は不可)を5分以内に見つけて、一緒にゴールするというものだ。
まずは1年生から始まり、ピストルの音と共に、私を含めた6人が一斉に走り出す。
案の定、私は足が遅くてお題の紙を取るのが最後になってしまい、他の5人はもう既にお題の物を探しに行っている。
お題は早い者勝ちなので、私は机に残っている1枚の紙を取る。
私は、4つに折られた紙を広げる。
「えっ!!!!?」
私は、自分のお題を見て仰天した。
そのお題は、――「好きな人」だった。
私はパニックになる。
何このお題!?
「1年生のお題は簡単」って、嘘だったんですか、東部長!?
私が紙を握りしめたまま呆然と立ち尽くしていると、1人目のゴールを知らせるピストルが鳴った。
えっ!?もうゴールした人いるの!!?
私は切られたゴールテープを見た後、自分のクラスのテントに目を向ける。
「春川さん、頑張ってー!!!」
クラスの子たちが私に声援を送っているのが見える。そこには、鏑木さんの姿もある。
せめてゴールはしないと――。
失格で終わってしまったら、みんなに申し訳がない。
でも、「好きな人」って、どうすれば――。
必死に思考を巡らせると、脳裏に前園先輩の顔が浮かんだ。
そうだ。婚約者の前園先輩なら、「好きな人」と言っても納得してもらえるだろう。
私は、2年生のアルファクラスのテントに向かって走る。
テントの前に辿り着くと、キョトンとした顔で私のことを見てくるアルファ男子たちの中から、前園先輩の姿を探す。
そして、後方の隅にいる前園先輩と目が合った。
私が必死に目で訴えかけると、前園先輩は自分のことを指差しながら小首を傾げる。
それに対して私がコクコクと頷くと、前園先輩は前の人たちをかき分けてテントから出てきてくれた。
「先輩、一緒にゴールして!」
「うん、分かった」
私たちは簡潔にそれだけを話すと、ゴールに向かって走った。
背後では、何やらどよめくような声が聞こえる。
頑張ってゴールまで走ったが、私たちは結局ビリだった。
「ごめんね、せっかく一緒にゴールしてもらったのに……」
「ううん、気にしないで。十分頑張ってたよ」
謝る私を、前園先輩は慰めてくれた。