あなたが運命の番ですか?
全競技が終了し、閉会式の前に15分休憩が設けられた。
みんな水分補給をしたり、トイレに行ったりしている中、クラス対抗リレーの出場者たちがぞろぞろとクラステントに戻っていくのが見える。
「あんなのインチキだろ……」
3年生のアルファクラスのアンカーが、肩をガックリと落としているのが目に留まった。
「まあ、『インチキ』とも言いたくなるわな」
鏑木さんはそんな彼を見ながら、ボソッと呟いた。
そんなリレーの出場者たちの中から、私はひと際目立つ星宮さんの姿を見つける。
星宮さんは、3人組の女子たちに囲まれていた。
「今、話し掛けると邪魔になるかな?」と思っていると、女子たちは星宮さんを残して去っていった。
「鏑木さん、星宮さんがあそこにいるよ。話し掛けに行こうよ」
私がそう提案すると、鏑木さんは「えーっと」と渋い顔をしながら辺りをキョロキョロと見渡す。
「……ごめん。私、トイレ行ってくるわ」
「えっ、あぁ、うん……。いってらっしゃい」
鏑木さんは、小走りで校舎のほうへと向かった。
私は1人で星宮さんの元へ向かう。
「星宮さん、リレー、お疲れ様」
「あぁ、春川さん、ありがとう。いやぁ、3位は悔しいなぁ」
星宮さんは苦い顔をしながら襟足を掻く。
「でも、トップバッターは星宮さんが最初にバトンパスしたよね?すごいなぁ、ハンデがあるとはいえ、男子もいたのに」
「あははっ、ありがとねぇ。いや、でも、やっぱり悔しいなぁ」
星宮さんはそう言って唇を尖らせる。
すると、星宮さんは「あれ?」と言いながら、私の頭部を凝視する。
「春川さん、ハチマキ捻じれてる」
「えっ?嘘っ?」
星宮さんに指摘されて自分のハチマキを触ってみると、確かに捻じれているような感触がする。
「あれぇ?いつからだろ?」
「ちょっと、ジッとしてて」
星宮さんは腰を屈めて私に顔を近づけながら、私のハチマキを触る。
「――よし、直ったよ」
「わっ!ありがとう、星宮さん」
星宮さんは私を見下ろしながら、ニコニコと明るい笑みを浮かべる。
「ん?――ゲッ!!?」
星宮さんは視線か何かを感じたのか、少し顔を上げ、そして突然顔を強張らせた。彼女は、真っ青な顔をして私の背後を凝視している。
私が「何だろう?」と思って後ろを振り向くと、2mほど離れたところに橘先輩がいた。
橘先輩はムスーッとした顔で私を見ている。いや、私ではなく、星宮さんを見ている?
「……ごめぇん。アタシ、喉乾いたから自動販売機でジュース買ってくるよ」
星宮さんは顔を引き攣らせながら、鏑木さんと同じように小走りで校舎へ向かう。
その姿は、まるで何かから逃げるようだった。
去っていく星宮さんの背中を見送っていると、校舎側から私をジーッと見つめている人物に気づいた。
それは、前園先輩だった。
みんな水分補給をしたり、トイレに行ったりしている中、クラス対抗リレーの出場者たちがぞろぞろとクラステントに戻っていくのが見える。
「あんなのインチキだろ……」
3年生のアルファクラスのアンカーが、肩をガックリと落としているのが目に留まった。
「まあ、『インチキ』とも言いたくなるわな」
鏑木さんはそんな彼を見ながら、ボソッと呟いた。
そんなリレーの出場者たちの中から、私はひと際目立つ星宮さんの姿を見つける。
星宮さんは、3人組の女子たちに囲まれていた。
「今、話し掛けると邪魔になるかな?」と思っていると、女子たちは星宮さんを残して去っていった。
「鏑木さん、星宮さんがあそこにいるよ。話し掛けに行こうよ」
私がそう提案すると、鏑木さんは「えーっと」と渋い顔をしながら辺りをキョロキョロと見渡す。
「……ごめん。私、トイレ行ってくるわ」
「えっ、あぁ、うん……。いってらっしゃい」
鏑木さんは、小走りで校舎のほうへと向かった。
私は1人で星宮さんの元へ向かう。
「星宮さん、リレー、お疲れ様」
「あぁ、春川さん、ありがとう。いやぁ、3位は悔しいなぁ」
星宮さんは苦い顔をしながら襟足を掻く。
「でも、トップバッターは星宮さんが最初にバトンパスしたよね?すごいなぁ、ハンデがあるとはいえ、男子もいたのに」
「あははっ、ありがとねぇ。いや、でも、やっぱり悔しいなぁ」
星宮さんはそう言って唇を尖らせる。
すると、星宮さんは「あれ?」と言いながら、私の頭部を凝視する。
「春川さん、ハチマキ捻じれてる」
「えっ?嘘っ?」
星宮さんに指摘されて自分のハチマキを触ってみると、確かに捻じれているような感触がする。
「あれぇ?いつからだろ?」
「ちょっと、ジッとしてて」
星宮さんは腰を屈めて私に顔を近づけながら、私のハチマキを触る。
「――よし、直ったよ」
「わっ!ありがとう、星宮さん」
星宮さんは私を見下ろしながら、ニコニコと明るい笑みを浮かべる。
「ん?――ゲッ!!?」
星宮さんは視線か何かを感じたのか、少し顔を上げ、そして突然顔を強張らせた。彼女は、真っ青な顔をして私の背後を凝視している。
私が「何だろう?」と思って後ろを振り向くと、2mほど離れたところに橘先輩がいた。
橘先輩はムスーッとした顔で私を見ている。いや、私ではなく、星宮さんを見ている?
「……ごめぇん。アタシ、喉乾いたから自動販売機でジュース買ってくるよ」
星宮さんは顔を引き攣らせながら、鏑木さんと同じように小走りで校舎へ向かう。
その姿は、まるで何かから逃げるようだった。
去っていく星宮さんの背中を見送っていると、校舎側から私をジーッと見つめている人物に気づいた。
それは、前園先輩だった。