あなたが運命の番ですか?
体育祭(閉会)②
アタシは自動販売機でスポーツドリンクを買い、その場でゴクゴクと飲む。
別に疚しいことがあるわけじゃないのに、春川さんと一緒にいるところを橘先輩に見られて焦った。
しかも、橘先輩、なんか怒ってなかった?
「君って、案外見境ないんだね?」
「んぐっ――!?」
突然後ろから話しかけられて、ペットボトルに口を付けていたアタシは驚いてむせる。
振り向くと、腕組みをした橘先輩がいた。
「あの子は止めときなよ。借り物競争の時、見たでしょ?婚約者がいる子に手を出したら、慰謝料請求されるかもよ」
橘先輩はムッとした様子で吐き捨てる。
もしかして先輩、アタシと春川さんの関係を誤解してる?
「ち、違いますよ。春川さんとはそんなんじゃなくって、その……、友達です」
「ふーん、友達ねぇ」
橘先輩は、まだ納得していないような顔をする。
「春川さんに対して、そういう気にならないの?」
「そ、そういう気、って……?」
「セックスしたいって」
橘先輩は声を潜めながら、そう言った。
アタシはその言葉を聞いて、衝撃を受ける。
「はあっ!?なるわけないじゃないですか!?何でそんなこと――」
アタシは思わず大声を上げる。
「だって、春川さんと君って、オメガとアルファじゃん」
「それはそうですけど……。だからって、友達に対してそんなこと思うわけないでしょ」
アタシがハッキリとそう主張すると、橘先輩はなぜか悲しそうな顔をした。
「そっか……。友達か……」
橘先輩は、まるでショックを受けたかのように肩を落とす。
「あっ、す、すみません……。言い方、キツかったですかね?」
アタシは様子を窺うように尋ねる。
「いや、違う……。ごめんごめん、ちょっとからかっただけだよ」
橘先輩は、フッといつものように小悪魔みたいな笑みを浮かべる。
アタシには、先輩が無理やり取り繕っているように見えた。
「でも、ヒートには気を付けなよ。あの時は僕だったから良かったけど、春川さん相手じゃそれは通用しないからね。春川さんが許しても、前園くんは許してくれないんじゃない?アルファって独占欲強いし」
「えっ……」
アタシは橘先輩に指摘されて、ようやく気づいた。いや、たぶん気づいていなかったわけでなく、目を逸らしていただけだと思う。
春川さんがアタシの目の前でヒートになれば、アタシは彼女を襲ってしまうのだろうか。橘先輩の時のように、我を忘れて――。
そのことを理解すると、途端に怖くなった。
「……まあ、どうせ3ヶ月に1回だし、ヒートの予定日が近づいてきたら、接触しないようにすればいいだけだよ。春川さんは次のヒートの予定日を把握しているだろうし、春川さん側から避けてもらうのがいいかもね。予定日から1週間くらい前後することはよくあるから、余裕をもって2週間前から近づかないようにするのが良いと思うよ。君が言いづらいなら、僕のほうから言っておくよ。『ヒート予定日の2週間前くらいから、星宮さんには近づかないほうがいいよ』って」
「あっ……。い、いや、アタシが自分で言います」
今日中に、直接かメッセージで伝えようと決めた。
「そう。分かったよ」
すると、橘先輩は突然アタシのほうへ近づいてきた。
「えっ!?」
橘先輩はアタシの胸ぐらを掴んでグイッと引き寄せ、アタシを無理やり中腰にさせる。
そして、先輩はアタシに軽く口付けた。
「んっ!?」
唇同士が触れ合った瞬間、心臓がドクンと大きく跳ね、全身がブワァッと熱くなった。
アタシは突然のことに困惑して、思わず飛び退く。
「借り物競争の時は、ありがとね。おかげで2位になれたよ。今のはそのお礼」
したり顔の橘先輩はそう言い残すと、アタシに背を向けて、その場を後にした。
別に疚しいことがあるわけじゃないのに、春川さんと一緒にいるところを橘先輩に見られて焦った。
しかも、橘先輩、なんか怒ってなかった?
「君って、案外見境ないんだね?」
「んぐっ――!?」
突然後ろから話しかけられて、ペットボトルに口を付けていたアタシは驚いてむせる。
振り向くと、腕組みをした橘先輩がいた。
「あの子は止めときなよ。借り物競争の時、見たでしょ?婚約者がいる子に手を出したら、慰謝料請求されるかもよ」
橘先輩はムッとした様子で吐き捨てる。
もしかして先輩、アタシと春川さんの関係を誤解してる?
「ち、違いますよ。春川さんとはそんなんじゃなくって、その……、友達です」
「ふーん、友達ねぇ」
橘先輩は、まだ納得していないような顔をする。
「春川さんに対して、そういう気にならないの?」
「そ、そういう気、って……?」
「セックスしたいって」
橘先輩は声を潜めながら、そう言った。
アタシはその言葉を聞いて、衝撃を受ける。
「はあっ!?なるわけないじゃないですか!?何でそんなこと――」
アタシは思わず大声を上げる。
「だって、春川さんと君って、オメガとアルファじゃん」
「それはそうですけど……。だからって、友達に対してそんなこと思うわけないでしょ」
アタシがハッキリとそう主張すると、橘先輩はなぜか悲しそうな顔をした。
「そっか……。友達か……」
橘先輩は、まるでショックを受けたかのように肩を落とす。
「あっ、す、すみません……。言い方、キツかったですかね?」
アタシは様子を窺うように尋ねる。
「いや、違う……。ごめんごめん、ちょっとからかっただけだよ」
橘先輩は、フッといつものように小悪魔みたいな笑みを浮かべる。
アタシには、先輩が無理やり取り繕っているように見えた。
「でも、ヒートには気を付けなよ。あの時は僕だったから良かったけど、春川さん相手じゃそれは通用しないからね。春川さんが許しても、前園くんは許してくれないんじゃない?アルファって独占欲強いし」
「えっ……」
アタシは橘先輩に指摘されて、ようやく気づいた。いや、たぶん気づいていなかったわけでなく、目を逸らしていただけだと思う。
春川さんがアタシの目の前でヒートになれば、アタシは彼女を襲ってしまうのだろうか。橘先輩の時のように、我を忘れて――。
そのことを理解すると、途端に怖くなった。
「……まあ、どうせ3ヶ月に1回だし、ヒートの予定日が近づいてきたら、接触しないようにすればいいだけだよ。春川さんは次のヒートの予定日を把握しているだろうし、春川さん側から避けてもらうのがいいかもね。予定日から1週間くらい前後することはよくあるから、余裕をもって2週間前から近づかないようにするのが良いと思うよ。君が言いづらいなら、僕のほうから言っておくよ。『ヒート予定日の2週間前くらいから、星宮さんには近づかないほうがいいよ』って」
「あっ……。い、いや、アタシが自分で言います」
今日中に、直接かメッセージで伝えようと決めた。
「そう。分かったよ」
すると、橘先輩は突然アタシのほうへ近づいてきた。
「えっ!?」
橘先輩はアタシの胸ぐらを掴んでグイッと引き寄せ、アタシを無理やり中腰にさせる。
そして、先輩はアタシに軽く口付けた。
「んっ!?」
唇同士が触れ合った瞬間、心臓がドクンと大きく跳ね、全身がブワァッと熱くなった。
アタシは突然のことに困惑して、思わず飛び退く。
「借り物競争の時は、ありがとね。おかげで2位になれたよ。今のはそのお礼」
したり顔の橘先輩はそう言い残すと、アタシに背を向けて、その場を後にした。