あなたが運命の番ですか?
体育祭の後
「ただいまー」
「寿々ちゃん、おかえりなさい」
帰宅してリビング&ダイニングへ行くと、お母さんが奥のキッチンで夕飯の準備をしていた。お父さんは書斎だろうか。
「ねぇ、お母さん、見てた?クラス対抗リレーで、前園先輩――」
私は上機嫌で、お母さんに体育祭の話をしようとした。しかし――。
「ねぇ、寿々ちゃん」
お母さんはタオルで手を拭きながら、キッチンから出てくる。
「閉会式の前に、話してた女の子、アルファよね?」
お母さんは、怖い顔をして私にそう問いかける。
「えっ……」
私は背筋が凍った。
お母さんの言う「女の子」というのは、星宮さんのことだろう。
私と星宮さんが話しているのを、保護者席のお母さんに見られていた。アルファと話しているのを見られていた。
「お母さん言ったよね?アルファに近づいちゃダメだって」
――アルファの子に近づいちゃダメよ?何されるか分からないんだから。
私は入学初日のお母さんの言葉を思い出す。
「……で、でも、星宮さんは女の子だし。それに、モデルさんで……。ほら、私が毎月買ってるティーンズの――」
「女の子でも、アルファはアルファでしょ?」
お母さんは語気を強める。
その威圧感に、私は思わず委縮してしまいそうになる。
「変なことされたらどうするの?力だって、向こうのほうがずっと強いんだから」
お母さんは目を吊り上げながら詰め寄る。
「何か反論しないと……」と、私は必死に言葉を探す。
「あっ、でも……、私のヒート予定日の2週間前からお互い近づかないようにしようって話してて……」
今日の下校中、星宮さんから私のヒートへの対処に関する提案のメッセージが届いた。
私は星宮さんのことを同性の友達だと認識しているので、時々彼女がアルファであることを失念してしまう。
そのため、星宮さんの目の前で私がヒートになった時のことを何も考えていなかった。
星宮さんに指摘されて「確かに、何かあってからじゃ遅いもんね」と思って、「そうしよう」と賛成した。
このことは鏑木さんにも伝え、彼女も賛成してくれた。
星宮さんは、私を傷つけないように気遣ってくれる優しい人だ。
お母さんが想像するような悪いアルファではない。
もしものことがないようにちゃんと対処しているし、星宮さんは悪い人ではないから大丈夫だと、私はお母さんに伝えたかった。
だけど――。
「寿々ちゃん、いつからお母さんに口答えするような子になったの!?」
お母さんは顔を真っ赤にして、金切り声を上げた。
「もしかして、あのアルファの子に悪い影響でも受けてるんじゃないの!?だから、お母さんの言うことが聞けないのね!!?」
お母さんは私の両肩を掴んで揺さぶり、私に向かって喚く。
私はそんなお母さんを目の当たりにして、血の気が一気に引いていく。
「おい、何やってるんだ!?」
すると、騒ぎを聞きつけたお父さんが別室から飛んできて、私とお母さんを引き離す。
私は、小さい頃から感情的になったお母さんが苦手だ。
自分の思い通りに私が動かないと、大声で喚き散らすお母さんが――。
気が付くと、私はボロボロと涙を流していた。
「寿々、もういいから、自分の部屋に行きなさい。お母さんのことは、お父さんが何とかしておくから」
お父さんは私の背中を優しく摩りながら、廊下へと連れて行ってくれた。
「お母さんの言った言葉は、気にしなくて良いからな」
階段を上る私の背中に向かって、お父さんはそう投げかけた。
その後、お父さんがどうにか宥めて、お母さんは落ち着きを取り戻した。
そして、冷静になったお母さんと話し合ったが、やはり前園先輩以外のアルファと仲良くすることは許してもらえなかった。
「寿々ちゃん、おかえりなさい」
帰宅してリビング&ダイニングへ行くと、お母さんが奥のキッチンで夕飯の準備をしていた。お父さんは書斎だろうか。
「ねぇ、お母さん、見てた?クラス対抗リレーで、前園先輩――」
私は上機嫌で、お母さんに体育祭の話をしようとした。しかし――。
「ねぇ、寿々ちゃん」
お母さんはタオルで手を拭きながら、キッチンから出てくる。
「閉会式の前に、話してた女の子、アルファよね?」
お母さんは、怖い顔をして私にそう問いかける。
「えっ……」
私は背筋が凍った。
お母さんの言う「女の子」というのは、星宮さんのことだろう。
私と星宮さんが話しているのを、保護者席のお母さんに見られていた。アルファと話しているのを見られていた。
「お母さん言ったよね?アルファに近づいちゃダメだって」
――アルファの子に近づいちゃダメよ?何されるか分からないんだから。
私は入学初日のお母さんの言葉を思い出す。
「……で、でも、星宮さんは女の子だし。それに、モデルさんで……。ほら、私が毎月買ってるティーンズの――」
「女の子でも、アルファはアルファでしょ?」
お母さんは語気を強める。
その威圧感に、私は思わず委縮してしまいそうになる。
「変なことされたらどうするの?力だって、向こうのほうがずっと強いんだから」
お母さんは目を吊り上げながら詰め寄る。
「何か反論しないと……」と、私は必死に言葉を探す。
「あっ、でも……、私のヒート予定日の2週間前からお互い近づかないようにしようって話してて……」
今日の下校中、星宮さんから私のヒートへの対処に関する提案のメッセージが届いた。
私は星宮さんのことを同性の友達だと認識しているので、時々彼女がアルファであることを失念してしまう。
そのため、星宮さんの目の前で私がヒートになった時のことを何も考えていなかった。
星宮さんに指摘されて「確かに、何かあってからじゃ遅いもんね」と思って、「そうしよう」と賛成した。
このことは鏑木さんにも伝え、彼女も賛成してくれた。
星宮さんは、私を傷つけないように気遣ってくれる優しい人だ。
お母さんが想像するような悪いアルファではない。
もしものことがないようにちゃんと対処しているし、星宮さんは悪い人ではないから大丈夫だと、私はお母さんに伝えたかった。
だけど――。
「寿々ちゃん、いつからお母さんに口答えするような子になったの!?」
お母さんは顔を真っ赤にして、金切り声を上げた。
「もしかして、あのアルファの子に悪い影響でも受けてるんじゃないの!?だから、お母さんの言うことが聞けないのね!!?」
お母さんは私の両肩を掴んで揺さぶり、私に向かって喚く。
私はそんなお母さんを目の当たりにして、血の気が一気に引いていく。
「おい、何やってるんだ!?」
すると、騒ぎを聞きつけたお父さんが別室から飛んできて、私とお母さんを引き離す。
私は、小さい頃から感情的になったお母さんが苦手だ。
自分の思い通りに私が動かないと、大声で喚き散らすお母さんが――。
気が付くと、私はボロボロと涙を流していた。
「寿々、もういいから、自分の部屋に行きなさい。お母さんのことは、お父さんが何とかしておくから」
お父さんは私の背中を優しく摩りながら、廊下へと連れて行ってくれた。
「お母さんの言った言葉は、気にしなくて良いからな」
階段を上る私の背中に向かって、お父さんはそう投げかけた。
その後、お父さんがどうにか宥めて、お母さんは落ち着きを取り戻した。
そして、冷静になったお母さんと話し合ったが、やはり前園先輩以外のアルファと仲良くすることは許してもらえなかった。