あなたが運命の番ですか?

隠し事

 6月下旬、だんだんと気温が高くなり、全校生徒の制服も夏服へ替わった。
 「真琴、CM観たよ!」
 昼休み、鏑木さんは裏庭で星宮さんに会うなり、少し興奮気味にそう言った。
 実は、星宮さんはスポーツドリンクのCMの主演に起用され、昨日からそのCMがテレビで流れ始めたのだ。
 今日は、学校中がその話題で持ちきりだった。

「私も観たよ。すごいねぇ、CMなんて」
 鏑木さんに続くように、私も祝福する。
「星宮真琴主演のCMが6月下旬から放送予定」という文章を、6月初旬発売のティーンズで見た時は私も驚いた。
 あの時も鏑木さんと一緒に、ここで星宮さんを祝った。
 
「えへへ、ありがとねぇ」
 星宮さんは照れ臭そうに、襟足を掻きながら笑う。

 体育祭の後、私はお母さんから「優一郎さん以外のアルファと仲良くしてはいけない」と言われた。
 しかし、せっかく出来た友達と縁を切ることが出来ず、私は今でも星宮さんと変わらずに接している。
「お母さんにバレなければ大丈夫」という悪い心が働いたのだ。
 それに、「アルファの星宮さんと仲良くしちゃダメとお母さんに言われた」なんて正直に話せば、きっと星宮さんは傷つくと思う。
 私は友達を傷つけたくなかった。もっと星宮さんと鏑木さんと、仲良くなりたかった。

「あれ?春川さん、どうしたの?」
「え?」
 そんなことを考えていると、星宮さんが心配そうに見つめてきた。

「なんかボーッとしてるみたいだったから。……何か悩み事?」
「あっ、ううん、何でもない」
 私は首を横に振り、無理やり笑顔で取り繕った。
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