あなたが運命の番ですか?

アタシがアルファだから?

「まこちゃん、CM観たよぉ。爽やかなスポーティー女子のまこちゃんにピッタリの良いCMだったわね」
 日曜日の午前中、撮影に行くと編集者の人がアタシのCMを褒めてくれた。
「ありがとうございます!」
 アタシは素直に嬉しくて、少し興奮気味にお礼をした。

 アタシがCMのオファーを受けたのは、高校入学前だ。マネージャーさんからオファーの話を聞いた時は、アタシもびっくりした。
 あのスポーツドリンクのCMは、人気女優への登竜門と呼ばれる歴史あるもので、歴代の主演は全て当時10代のモデルや女優だ。
 国民的な人気女優を大勢輩出したCMに、アタシが出演できるなんて夢みたいだった。
 このCMのオファーによって、アタシは今までのモデル業の実績を認めてもらえたような気持ちになった。

 正直、撮影の時のことは、ガチガチに緊張していたせいで記憶が朧気だ。
 唯一覚えているのは、バスケのシーンだ。
 打ち合わせの時、アタシが中学時代にバスケ部だったことを知った製作スタッフの方が、「せっかくスポーツドリンクのCMだから、バスケのシーンを撮ろう」と提案してきた。
 撮影当日、エキストラも交えてドリブルからのレイアップシュートを決めるシーンを撮ったのだが、緊張のせいもあって3回も失敗してしまった。
 撮影が終わった後は「上手くできたかな」と不安だったが、完成品を見ると歴代のCMと並んでも遜色ないクオリティーに仕上がっていた。

 学校でも「CM観たよ」と色んな人に言われ、かなり好評な様子だ。
 褒めてもらえるのは嬉しいのだが、両親が「真琴がテレビに出てるよ」とCMが流れるたびに部屋までやって来て報告してくるのは、少し鬱陶しい。

「CM効果で、まこちゃんの人気がもっと上がっちゃうかもねぇ」
 編集者さんは上機嫌で話す。
「あっ、そうだ。実は、来月号の表紙、まこちゃんに決まったのよ」
「えっ!?本当ですか!!?嬉しい!」
 アタシは思わず飛び上がりそうになる。
「でも、()()アタシで良いんですか?今月号だって……」
「んふふ、いいの、いいの。まこちゃんが表紙だと売り上げが上がるんだから」
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