あなたが運命の番ですか?
 アタシはしばらくの間、ベッドの上でグッタリと倒れている橘先輩をぼんやりと見つめる。
「……ハァ、喉乾いた」
 アタシは全裸のままベッドから降りて、床に転がっている自分のショルダーバッグからペットボトルを取り出し、それをゴクゴクと飲む。

「……僕にも、ちょーだい」
 橘先輩は倒れたまま、力なくそう言った。
「『ちょーだい』って、アタシが飲んだやつを?」と困惑しつつも、アタシはペットボトルを恐る恐る差し出す。
「どうせなら、口移ししてよ」
「えぇっ!?」
 
 アタシは面食らいながらも、言われた通りにペットボトルの中身を口に含んだ。
 そして、橘先輩を抱き起し、唇を重ねてゆっくりと含んだ液体を先輩の口に流し込む。
 ゴクゴクと橘先輩は喉を鳴らし、合わせた唇の隙間からタラタラと液体が漏れて、先輩の顎や身体を濡らす。
 アタシは自分の口の中が空になると、唇を離した。

「ん、ありがと」
「……どういたしまして」
 橘先輩は、アタシが握っているペットボトルをジッと見つめる。

「……そう言えば、君ってモデルなんだっけ?」
「えっ?そうですけど……」
「なんかクラスの女子たちが騒いでたわ。CMやってるって」
 橘先輩は、ペットボトルを指差す。
 完全に無意識だったが、アタシが先輩に飲ませた飲み物は、アタシが出演したCMのスポーツドリンクだ。
「えぇ、まあ……」
 アタシは何だか後ろめたくて、ペットボトルを慌ててバッグに戻した。

「僕、ファッション誌とか疎いから全然知らなかった。CM出るくらいだったら、結構有名なんじゃない?」
「いや、そんなことないですよ……。モデル以外の仕事はほとんどしてないですし……」
 橘先輩にモデルの話をされると何だか恥ずかしくて、早々に話題を切り上げたいと思った。

「君ってさぁ、()()()()()()とか怖くないの?」

 アタシは橘先輩の発言に困惑し、数秒間フリーズする。
「……えっ、ス、スキャンダル?」
 すると、そんなアタシの反応を見た橘先輩は、呆れたようにため息を吐いた。
「まあ、アルファが不純異性交遊くらいで、叩かれるわけないもんね」
 橘先輩はゆっくりとベッドから降りる。

「お風呂入る」
「あぁ……、じゃあ、アタシ、もう帰りますね」
 アタシは床に落ちている自分の下着を拾おうとした。
「君も一緒に入ろうよ」
「えぇっ!?」
 アタシは、突然の橘先輩の申し出に困惑する。

「いや、いいですよ。帰りますって」
「いいって。汗かいて気持ち悪いでしょ。それに、――ナカ掻き出すの手伝ってよ」
「えっ……、あぁ、はい……」
 アタシは橘先輩に言いくるめられた結果、先輩とお風呂に入った。
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