あなたが運命の番ですか?
 ミルキーウェイレストランから出ると、もう辺りはすっかり暗くなっていた。
「1人で帰れるのに……」
「いや、流石にもう暗いですし、送っていきますよ」
 アタシがそう言うと、橘先輩は「あっそ」と素っ気なく返した。

 アタシたちは、橘先輩が住むアパートの部屋の前までやって来た。
「ありがとね、それじゃあ」
「あ、先輩」
 玄関を開けようとする橘先輩を、アタシは呼び止める。
 そして、「何?」と言って振り返った橘先輩を、アタシは優しく抱きしめた。

「……何?ムラムラしちゃった?」
「あははっ、ごめんなさい、そういうのじゃないです」
「慰めてあげたかった」なんて、恋人でもない女に言われたら気持ち悪いだろうな。
 だけど、あんな泣きそうな顔を見てしまったら、抱きしめずにはいられなかった。

 橘先輩の身体は暖かいけれど、少し震えているような気がする。

「それじゃあ、おやすみなさい」
 アタシは抱きしめていた腕を解いてから、そう告げる。
「うん、またね」
「……はい、また」
 アタシはそう言い残して、その場を後にした。
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