* Snow gift *
 12月23日、午後11時58分。


 機材のセッティングは速やかに行われ、後は彼女が飛び出していくだけだった。

 緊張は程の良い高揚感へと変わり、熱い何かが胸の奥で脈打ち始める。

 彼女はこの瞬間が一番好きで、一番怖かった。

「忘れてたわね、この感じ……」

 忙しなく入れ代わるこの相反する感情はどこか『恋』に似ている。

(あぁそうか……)

 だからやめられないのかもね、と思い、彼女はくすっ、と軽く微笑んだ。

 その顔にもはやなんの迷いもない。

 いや、迷って尚、歩いてみせようという気持ちが表れていた。

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