【改訂版】ぺちゃんこ地味系OLだけど水曜日の夜はびしょぬれ

既成事実


 ベッドの上での桃瀬は、少し酔っていた。石和(いさわ)に「えへへ〜、抱いてぇ」と云いながら首へ腕をまわしこみ、「好きぃ」と告白する。「理乃ちゃんは、ラム酒に弱かったのか」と、原因のカクテルグラスを横目に、石和は桃瀬と性行為におよぶ。

「石和さぁん!」

「理乃ちゃん、大好きだよ。ぼくのせいで、いつも不安にさせてごめんね。今夜は、特別なことをしよう」

 石和の息づかいを敏感にとらえる桃瀬は、恋人のぬくもりを切実に求めた。

「理乃ちゃん、いいんだね?」

「さ、最後まで……してくださいぃ……」

「わかった。そうしよう」

 期待に応えるかたちで桃瀬を裸身(はだか)にする石和だが、少しでも負担を減らせるよう、少しずつ時間をかけ、ゆっくり肌を愛撫した。

 酔った勢いでベッドインした桃瀬だが、思考が追いつかないうちに、いつのまにか躰はつながっていた。

 触れあう肌はどちらも熱く、興奮状態がつづく。石和は桃瀬に声をかけた。

「理乃ちゃん、だいじょうぶ?」

「……うっ、へ、平気ですよぅ」

「よかった。つらければ云っておくれ」

「は、はい……」

 どうしてもじわじわと涙が浮かんでしまう桃瀬は、石和の呼吸を強く意識した。酔いに慣れてきたせいか、相手との距離感が失われている現状に、一瞬、ぎょっとなる。信じられないというよりは、あり得ないと思ってしまう心境が複雑だ。どんなふうに手足を動かせばよいのかわからず(恥ずかしさも捨て切れないが)、力を抜くことに集中した。

「理乃ちゃん、すごく上手だよ。ぼくを赦してくれた証拠かな」

「ゆるす……だなんて……、わたしのほうが……ずっと石和さんに迷惑をかけているのに……、ごめんなさい……」

「そんなふうに悩まないでおくれ。ぼくは、まったく迷惑だなんて思っていないよ。……すまない。少しきついかな。もう少しがんばって」

「石和さ……ん……、大好き……」

「ああ、ぼくもだ。どうか泣かないで」

「うっ、うぅ〜……!」

「さあ、ほら、しっかり」

「は、はい。しっかりします……?(うわわっ、深いところきたぁ! すごい、すごい、すごい、変な声でちゃうよ〜!)」

 石和の熱量に感動して、桃瀬の頭はクラクラするばかりだが、会話をしながら愛しあうふたりは、かつてないほど濃厚な時間を過ごした。


✦つづく
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