※修正予定あり【ぺちゃんこ地味系OLだけど水曜日の夜はびしょぬれ〜イケおじの溺愛がとまらない!?〜】
元気をだして
セブンスターのバーカウンターでカクテルを作る石和は、窓ぎわの丸テーブルにつく桃瀬と沙由里の会話が気になった。
「あのふたり、いつのまに仲良くなったンすかね?」
一階の調理場から料理を運ぶ圷は、桃瀬と相席する沙由里を見つめ、「う~ん」と頭を悩ませた。いつもなら指定席としている石和の正面に坐る沙由里だが、なぜか桃瀬と腕を組んで階段をのぼってきた。入口で意気投合でもしたのかと思い、ふだんどおり接客をする石和は、ふたりぶんのカクテルを作ると、銀製トレーのサルヴァにグラスを載せた。ギャルソンの圷がトレーをひき受ける。
「こんばんは、プリンセス」と、気取った手つきでグラスをテーブルに置く。
「やさしい嘘と、貴方を想うです」
赤ワインを使った前者を沙由里に、ウォッカを使うためアルコール度は高めだが、石和の指示どおり後者を桃瀬にすすめた。「乾杯」といってグラスをかたむける沙由里に、桃瀬は「か、乾杯……」と、控えめにグラスを持ちあげた。カチンッと、ガラス音が鳴る。酔いやすい桃瀬は、ライラをのみきるころには頭がクラクラして、自力で立てなくなっていた。……ああ、すごく気持ちいい~。このまま寝ちゃってもいいかなぁ。えへへ、もう歩けないや……。
「あら、やだ。これくらいで酔ったの? まだまだお子さまね」
会話のとちゅうで眠ってしまう桃瀬を見た沙由里は呆れ顔になり、カウンターへ目配せした。いまにも床へ倒れそうな姿勢で椅子に坐る桃瀬に腕を差しのべたのは、食器をさげにきた圷だった。
「お客さま、お客さま」と肩をゆすり、意識の有無を確認すると、小さく溜め息を吐いた。「ぐっすり寝てんな」「奥で休ませてあげて。わたしは帰るわ」「沙由里さん、お代なら結構ですよ」「だめよ、坊や。ちゃんと請求して頂戴」
沙由里にあしらわれる圷だが、彼女に認めてもらいたくて勉強中である。唇を尖らせると、沙由里は笑みを浮かべ、カウンターの石和へ投げキッスをした。桃瀬を抱きあげる圷は、休憩室のソファへ寝かせると、呼吸が楽になるようにシャツブラウスの釦を胸もとまで解いた。ソフトラベンダー色のブラジャーがちらつき、石和とベッドインする淫らな桃瀬の裸身を想像した圷は、そっと、ブラジャーのなかへ指を這わせた。小さくてもやわらかさを感じる乳房を軽くもんでいると、「はっ、……ぁんっ」と、桃瀬が甘い吐息をもらした。
「うおっ? やべぇ、なにやってんだ、おれ!」
ハッとして腕をひき、あわててタオルケットを掛けると、廊下にでたところで石和と鉢合わせた。
「理乃ちゃんのようすはどう?」
「ど、どうって? べつに、おちついてますよ。最近になってアルコールを嗜むようになった女の子に、いきなりあんな強いカクテルをのませたのは、貴之さんのほうでしょうが……」
やけに早口でしゃべる圷に違和感を覚える石和だが、桃瀬を酔わせた事実を指摘され、くすッと笑った。沙由里との会話を長引かせないため、カクテルのアルコール度は計算して作ってあった。相席が誰であろうと、グラスをかたむける時間は、短いほうがいい。桃瀬を大事に思ういっぽう、独占欲も増してゆく。
閉店後、4WDの後部座席に桃瀬を乗せてアパートへ帰宅した石和は、自室のパイプベッドに横たえた。シャツブラウスとスカートを脱がせ、ブラジャーとパンティーは洗濯した。熟睡している桃瀬は、朝になり、仰天して飛び起きた。
「やあ、おはよう」
「いっ、石和さん? ここって……」
「ぼくの部屋だよ」
レッドサンズからどうやって帰宅したのか思いだせないうえ、全裸であることに動揺して、わたわたとベッドにもぐりこんだ。……な、なんでこんなことに!? ゾワッと血の気がひく桃瀬だが、からだの異変は感じなかった。実際、ベッドで寝ていたのは桃瀬ひとりであり、石和は、床に敷いたラグの上で仮眠した。朝から身だしなみは整っている。午后から仕事につき、桃瀬とゆっくりできる時間はかぎられていた。
「理乃ちゃん、顔を見せてほしいな」
「ね、寝起きは、恥ずかしいです……」
「心配ないよ。きみの素顔はとてもかわいいから、ぼくに見せておくれ」
「か、かわいくなんか……」
「こっちからいくよ?」
「ふえっ!?」
バサッと掛け布団を持ちあげられた桃瀬は、きゃーっと心のなかで叫び、両手で顔を隠した。下半身が丸見えの状況だが、顔面の死守を優先した結果、石和のほうで気をつかい、そばから離れた。洗面所を借りて顔を洗う桃瀬は、昨夜の記憶がすっかりぬけ落ちていた。
✦つづく