幼なじみは私の秘密の吸血鬼【マンガシナリオ】

第一話 幼なじみは吸血鬼

〇時期5月あたり

〇未来のシーン、姫花の家、リビング

ソファに座る二人
姫花の服に手をかけるアルト
赤面する姫花

アルト「……いいのか?」
姫花「……うん」

姫花(これが――私たちの秘密)

〇未来のシーン終了


〇姫花とアルト隣同士の家

姫花(私には幼なじみがいる)

姫花「いってきまーす」

姫花、自分の家から出て隣の家へ向かう
アルトの家のインターフォンを鳴らすが応答無し
姫花、窓の方を向く

姫花「アルトー! 遅刻するよー!」

窓がガラリと開き、アルトが身を乗り出す

アルト「今行く!」
姫花「え、ちょっ……」

アルト、窓から飛び降りて着地
姫花、慌てて周りを見てアルトに駆け寄る

姫花「ちょっと危ないじゃん!」
アルト「へーきへーき。俺、吸血鬼だよ? あんな高さ、なんてことないよ」
姫花「でも誰かに見られでもしたら……」
アルト「見てたのは姫花だけ。な? ほら行こーぜ」

歩き出すアルトに追いつくため早歩きして隣に立つ姫花

姫花(そう……私、鷹山姫花が抱えている秘密とは……幼なじみの来栖アルトが吸血鬼だと知っているということ)
姫花(正確には吸血鬼のハーフらしいけど)


〇回想開始、小さい頃、アルトの家や公園

姫花(アルト一家とは幼稚園の頃からの付き合いだけど……吸血鬼のハーフだと知ったのは小学生の頃だった)

身体能力が異様に高く、傷の治りも早いアルト
アルトの両親にそれを告げるとあっさり吸血鬼のハーフと教えてくれる

姫花(おじさんもおばさんもちょっと浮世離れしてるから、アルトのことあっさり教えてくれたんだよね)
姫花(でもそれはおじさんとおばさんが私を信頼してくれてたからで、吸血鬼はみんなバレないように暮らしてるって言ってた。だからアルトと二人だけの秘密って約束したんだ)

〇回想終了


〇通学路

アルトと並んで喋りながら歩く姫花

姫花(まあ吸血鬼のハーフって言っても、寿命は人間基準で、人より身体能力が高いってぐらいらしい)
姫花(血は飲まないのか聞いたら、大ケガをしたり吸血鬼の力を使い過ぎたりすると必要になるらしい。だからアルトはまだ一度も人の血を飲んだことが無いんだとか)

姫花、アルトの方を見る
アルト、視線に気付き姫花の方を見る

アルト「なんだよ~」
姫花「なんでもない!」

姫花(だからアルトは私にとってちょっと変わった幼なじみなんだ)


〇朝、学校、姫花の教室(1-C)

姫花、友人のみちるに挨拶をする

姫花「おはよー」
みちる「おはよー姫花。今日も来栖くんと一緒に登校? うらやましー」
姫花「家が隣ってだけだよ」
みちる「そんなこと言ってると先輩たちから睨まれちゃうよ?」
姫花「え?」
みちる「入学してから一ヵ月経つけど、先輩たちを中心に来栖アルトを愛でる会みたいなのができてるって噂なんだから」
姫花「ええっ、なにそれ!?」

窓の外を見るみちかにつられ姫花も窓の外を見る
体育で校庭に出る体操着のアルトの姿
アルト、姫花に気付き手を振る
小さく手を振り返す姫花

姫花「アルトー! 体育、やりすぎちゃ駄目だからねー」
姫花(もし吸血鬼の身体能力を使い過ぎて血が欲しくなっちゃったら大変だし……)

こぶしを上げて姫花に返事をするアルト

みちる「あー、やっぱりかっこいい。一年生の中じゃダントツでかっこいいもんなぁ」
姫花「そ、そうなの?」
みちる「もう! 姫花は幼なじみだから来栖くんの良さに慣れすぎなんだよ。私だったらあんなかっこいい幼なじみいたら毎日がハッピーなんだから!」
姫花「そういうもんかなぁ……?」

窓の外、アルトの背中を目で追う姫花

姫花(……そっか。アルト、先輩たちからも人気なんだなぁ)
姫花(確かにかっこいいし優しいけど……)
姫花(そういうふうに考えたこと無かったなぁ)


〇昼休み、学校、姫花の教室(1-C)

姫花、座席でみちるとお弁当を食べている
姫花の教室にアルトが乗り込んでくる

アルト「姫花ぁ~! 国語の教科書忘れたから貸してー」

アルトの出現にざわめく女子
呆れた顔の姫花

姫花「もぉ~。あれだけ忘れ物気を付けなよって毎回言ってるのに」
アルト「気を付けててもなんか忘れちゃうんだよねー」
姫花「私が貸してあげると思ってるから気が緩むんだよ」
アルト「そ。俺、姫花がいないと駄目なの」

甘えるアルトの表情に、うっ、となる姫花
周りで軽く悲鳴が起きる

姫花(みんなキャーキャー言ってるけど、吸血鬼には魅了<チャーム>の力があって、無意識にでも行為を持たれるような仕草をしやすいっておばさんが言ってた)
姫花(もしアルトが本気で吸血鬼の力を使ったら、このクラスの全員を言い成りにすることだって可能なんだ)

アルト「姫花、ありがとー」
姫花「はいはい」

姫花(子供の頃はそう感じなかったけど、アルトと一緒にいると非日常だなーって感じる)


〇夕方、姫花の家、姫花の部屋

ベッドの上で携帯ゲームをする私服の姫花

姫花「最近はゲームしてる時の方が逆に『日常』って感じで落ちつくわー」

MMORPGをしている姫花
チャットが飛んで来る

※タカヒメ:姫花のHN
 ハント:姫花のフレンドのHN(のちの狩夜)

姫花「あ、ハントさんインしてるー」

タカヒメ『こんにちはハントさん』
ハント『こんにちはー。今日はイン早いですね』
タカヒメ『学校終わってそっこーインしちゃいました。最近の癒し、ここなんで』
ハント『自分も最近はドタバタしてて……癒しはここですよね、わかります』
タカヒメ『お忙しいんですか?』
ハント『引っ越しするんです』※のちに狩夜がやって来る伏線
タカヒメ『あー、それは忙しいですね。頑張ってください』
ハント『ありがとー』

ふと学校用鞄を見て思い出す姫花

姫花「あっ! そういえば数学のノートもう終わるんだった。買いに行かなきゃ」


〇夜、コンビニ

コンビニでノートを買い、出てくる姫花

姫花(早めに気付いて良かったー)

コンビニ前でたむろしている男たちと目が合う姫花
まずいと思って行こうとするが、男たちが近寄って来る

男A「ねえ何買ったのー?」
男B「え、近くで見るとかわいいじゃん」
男C「今からカラオケ行かない?」
姫花「いや、あの……」

姫花(嫌だ。どうしよう。恐い。まさか絡まれるなんて)
姫花(こんな時間に一人でコンビニ行くんじゃなかった)
姫花(助けて)
姫花(助けて、アルト……!)

男A「ねえなんか言いなよー」

姫花に触れようとした男Aの腕をアルトが掴む
姫花の前にアルトが現れる

姫花「アルト……!?」
男A「なんだよてめぇ……いってててて」
アルト「姫花に触れんな」

アルト、男たちを睨み付け、男Aの腕を離す
男B、アルトの胸倉を掴み、殴ろうとする

男B「このやろう……!」
アルト「……!」

アルトの目の色が赤く変わる ※吸血鬼の力を使っている
それを見て慌てる姫花

姫花「ま、待ってアルト……っ」
姫花(目の色が変わった。吸血鬼の力を使う気だ……!)

アルト、向かってくる男Bの拳を避け、目線を合わせる
途端に動けなくなる男B

男A「おい、どうしたんだよ……」

男A、男Cの方にも赤い目を向けるアルト
男たちは動けなくなり、虚ろな表情になる

アルト「今日のことは忘れて帰れ」
男たち「「「はい……」」」

退散していく男たち
それを見届けると、アルトの目の色が元に戻り、ふらつく

アルト「っ……」
姫花「アルト!」

アルトの体を支える姫花

アルト「……無事だった?」
姫花「うん。助けてくれてありがとう。でも……」

姫花(体が冷たい……早く休ませなきゃ……!)

アルトの体を支えて歩き出す姫花


〇夜、姫花の家、リビング

姫花、リビングのソファにアルトを座らせ、自分も隣に座る

姫花(アルトのご両親、夜はいつもいないからうちに連れてきちゃったけど……一体どうしたら……)
姫花(アルトの体、どんどん冷たくなってく……)

姫花「アルト……ねえアルト、大丈夫?」

青ざめているアルト、苦しそうに笑う

アルト「あんなやつらにあそこまで力を使う必要無かったかもな……」
姫花「力を使い過ぎたってこと……?」
アルト「ああ」
姫花「……アルト。もしかして今、血が欲しいの?」

姫花の真っ直ぐな質問に目を見開くアルト
葛藤した上で返事をするアルト

アルト「……ああ」
姫花「………」

しばし沈黙
姫花、意を決し、自分の服のボタンを外す
アルト、驚く

アルト「な、何してんだ……?」
姫花「あげる」
アルト「何を……?」
姫花「私の血、あげるよ」

息を呑むアルト

アルト「す、少し寝てりゃ大丈夫だよ……」
姫花「そんなわけない! アルトの体、どんどん冷たくなってる!」
姫花「元はと言えば私のせいだもん! それとも私の血じゃ駄目なの!?」
アルト「……そんなこと、ない」

姫花の首元を見て、ごくりと喉をならすアルト
見つめ合う二人
姫花の服に手をかけるアルト
赤面する姫花

アルト「……いいのか?」
姫花「……うん」

露わになった姫花の肩に吸い付くアルト

姫花「っ……!」
アルト「………」

吸血行為を終える
二人とも息が乱れている
アルト、口元から血を滴らせながら、にやりと笑う

アルト「姫花――これ」
アルト「俺たちだけの秘密ね」
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