貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
 食事中もそうだった。表情も乏しく、おかげで彼がなにを考えているのか、さっぱりわからない。
 お見合いが嫌なのだろうか。だけど気に入られないとららかに怒られる。ときとして暴力も伴うそれは百合花にとっては避けたい事態だ。

「あの、今日は会えて嬉しいです」
 必死にそう言うと、彼はじろりと百合花を見た。
「本気で言っていますか」
 問われて、百合花は言葉につまる。

「無理をしなくてもいいですよ。俺は断るつもりですから」
「そんな……」
「親の都合の見合いでしょう。無理をする必要はありません。国の(もとい)となる憲法にも『婚姻は、両性の合意のみに基いて成立』すると書かれています」
 それは百合花もなにかもタイミングで聞いたことはある。

「いえ、でも、私は……」
 どう言えば『ららか』らしく彼に気に入ってもらえるのだろう。
 胃がきりきりと痛む。吐き気もどんどん強くなって百合花はおなかを押さえる。

「あなたも成人しているのですから、親の庇護から抜けてひとりの人として生きていく権利があるのですよ」
 百合花は驚いて彼を見た。見開いた目に映る彼は相変わらずの無表情だ。

 母に支配され、抜け出せずにいる自分を見抜いたような言葉だ。胸が切り裂かれ、無理矢理に新しい風を吹き込まれたような気持ちがする。
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