貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
「理由はわかりません。小さいころからそうでした。姉のららかばかりひいきされて、私はいつも蚊帳の外でした」
「それだけじゃないだろう」
 迅が言うと、百合花は顔を伏せる。

「その手……荒れたまま放置ということは、ケガをしても治療もしてもらえないんだろう」
 指摘され、百合花は手を後ろに回して隠した。

「弁護士さんて、なんでもお見通しなんですね。すごいです」
 えへへ、と誤魔化すように笑う百合花に迅が目を細める。

「ずっとこうなので、もう慣れました。だから大丈夫です」
「大丈夫じゃないわ」
 春子が顔を曇らせた。春の日差しが陰るように、空気が沈む。

 それから百合花は問われるままに語った。小さいころからの仕打ちを。
 同じ顔があるのが嫌だと言われて切り付けられた話のときには、春子は両手で口元を覆って身をすくめていた。
 大学の替え玉受験も姉がホストとつきあっているのも、迅に聞かれると隠せない気がしてすべて話してしまった。

 長い長い話を終える頃にはお茶はすっかり冷めていた。

「つらかったわね」
 慰める春子の言葉に、じんわりと涙がにじむ。
 こんなふうにいたわってくれる人が現れるなんて、昨日までは想像もしなかった。
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