貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
「なにか隠してるだろ?」
「蒔田商事と言えば、パワハラの問題がありますね」
 迅は話を変えた。

「そーそー。ネットで社員が告発して炎上、上層部が記者会見であほ言って大炎上」
 パワハラ社員を擁護して火に油が注がれた。株価は暴落し、まだ下がり続けている。

「パワハラ受けた社員のひとりがうちにも相談に来たらしいよ。弁護団を作るかもだってさ」
「そうですか」
 淡々と応じる迅に、真哲は興を削がれたようだった。

「そんな冷静ってことは、やっぱり婚約してないのかあ」
「どちらにしてもいちいち動揺を見せるようではどうかと思いますけどね」

「動揺につけこまれるってか。さすが鋼鉄の弁護士」
 からかう口調で言う真哲はいつも明るく飄々としていて、だから内心を読ませない。無表情の迅とは違う強みがある。

「さっき、ホストに貢いだっていう女性が相談に来てさ。売掛の借金が返せないから自己破産したいんだと」
 近くの席から声が聞こえて迅は耳をすませた。

「免責不許可事由で自己破産できないだろ」
「それをホストにも言われて、返済を迫られてるって」

「最近よくニュースにもなってるよな。金がなくなって風俗に売られたり売春させられたり」
「彼女はそこまでじゃなかったけど、金融会社への借金を指示されたってよ。払わないと実家に行くとか言って」

「違法じゃん。脅迫も追加されてる」
「だからそこを突いてさ……」
 守秘義務に抵触する内容まではこんなところでは話さないが、事務所の人間しか来ないカフェだから、同僚への相談や愚痴もこぼれてくる。
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