貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
「ホストってそんないいもんかなあ」
 真哲がぽつりとこぼす。
「鍵田さんならナンバーワンになれそうですけど」
「やっぱりそう思う?」
 真哲は機嫌よく答える。

 この明るい雰囲気は深刻になりがちな案件を抱える弁護士事務所では貴重だと迅は思う。実際、彼は事務所内で人気がある。
 自分には真似できないが、百合花もやはり彼のような男のほうがとっつきやすくていいのだろうか。

 そんなことを考え、思いのほか不快になる自分に気がついた。
 次いで、彼女に好きな男がいる可能性を見落としていたことに気が付いた。彼女を救うことばかり考え、彼女の意志確認をしないままに接近禁止だの婚約だのと先走っていた。

 こんなミスは初めてだ。
 彼女は不快に思っていないだろうか。
 最初は怯えていた百合花だが、春子に気を許し、今は迅にもくつろいだ笑みを見せるときがある。
 そのはかなげな微笑を守りたい。ほかの男になど見せたくはない。

 こんな思いはほかの女性には抱いたことがなかった。
 今まで女性とつきあうことはあってもどこかドライで、それで「心を開いてもらえない」とフラれていた。

 あの少女を救えなかった。なのに自分が女性と幸せになっていいのか。
 その疑問が解消できなくては前に進めないのだと、そう思っていた。
 だが。
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