貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
 エレベーターを降りると店員が待ち構えていて、ロココ調の部屋に誘導された。
 デパートにこんな部屋があるなんて、と百合花は戸惑った。
 実家のリビングもロココ調だったが、それより数段は洗練されていた。

 優美な曲線の花台には白い百合の花が飾られている。やわらかそうな淡い色のソファに、なめらかな曲線のローテーブル。その上には花柄のティーセットとお茶菓子が準備されていた。

 服のかかったラックや靴がたくさん並んだ棚の支柱は金色で、からみつく蔦は同じく金。
 試着室は二畳ほどの半円状で、金のタッセルがついたベージュのカーテンは植物の模様が浮き出たジャガード織で、今は両脇に束ねられている。

「今日の服も似合っていてきれいだが、着替えてもらう」
「な、なにか駄目でしたでしょうか」

「駄目じゃないが、暑そうだ」
 腕の傷を気にして長袖を着ているから、それが彼の気に障ったのかもしれない。だけど腕の傷を見られたくない。どうしよう、と百合花は困惑する。

「でも私、奥様に買っていただいてばかりで」
「今日は俺が買いたいんだ」
 強く言われ、百合花はどきっとした。なんだか彼に独占欲を示された錯覚に陥りそうだ。

「薄手のものを用意してもらった。試着してみてくれ」
「お嬢様、こちらへどうぞ」
 女性の店員に言われて、一緒に歩いて行く。お嬢様と呼ばれてこそばゆかった。
 渡された服を着ては彼に見せ、最後にどれが気に入ったかと聞かれる。

「すみません、私にはよくわからなくて……」
 申し訳なくなりながら謝る。
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