貴方が結ぶ二重螺旋  ~鋼鉄の敏腕弁護士は遺伝子レベルで彼女を愛す~
 百合花と同じ顔だと言われることは小さいころからストレスだった。
 同じ顔があるだけでも気持ち悪いのに、おどおどしてみっともないあいつと同じだと言われるのはなおさら気分が悪い。
 自分は自分だけがいれば充分なのに、もうひとりが存在するなんて、ありえない。

 だからあいつの顔に傷をつけてやろうとしたら、止められた。悔しくてたまらない。が、その晩は珍しく父にまできつく叱られたから、顔を狙うのはあきらめた。
 大人になるにつれ、おしゃれをする自分とダサい百合花とで差がついていくのは多少は気分を良くしてくれた。

 社交的で光のような自分と、影そのもののような陰鬱な百合花。

 大学の試験は身代わりで受験をさせたが、車の免許の試験は断固として拒否されたのは腹が立った。母に言い付けたら怒ってくれたが、それでも受験に行かせなかったのが納得いかない。それが英里子の最後の良心だったなんてことはららかには知る由もない。

 免許があれば車の運転ができてもっと行動範囲が広がるのに。
 男の運転で助手席に乗るのも気分がいいが、やはり運転もしてみたい。自動車学校に通うなんてまどろっこしいことはしたくない。一度は入学して通ってみたが、面倒になって数回でやめた。運転の技術だけを教えてくれればいいのに、学科試験があるなんてバカみたいだ。

「あ、なんだ、これがあるじゃん」
 ふと思い出す。百合花の免許証は自分が持っている。これを使えばいいだけだ。他人から見たら同じ顔に見えるらしいから、問題ないだろう。

 たまには劣化コピーも役に立つ。いや、役に立たなくては存在の意味がない。あいつに役割があるとしたら、ららかを幸福にするためにすべての苦労や不幸を引き受けることだ。
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