クールな天才作家は彼女を激愛で溶かしたい
そこには、背が高くて、髪はボサボサで肩くらいまで伸びていて、黒縁の瓶底みたいな眼鏡はなんだか傾いてるし、無精髭を生やした男性がのっそりとあくびをしながら出てきて、お腹をぽりぽり掻いていた。
は?
「あ、飛鳥先生はどちらに?」
「あんた誰」
声がとても低い。
「え? あっ、私、集談社の編集者をしております中村里帆と申します。この度、不知火飛鳥先生の締切が近いという事で一度様子を見に来た次第で…す…」
ポケットからタバコを取り出してジュッと火をつけ吸い出した男性。
「また変わったの?」
ドアに身体を寄りかかるようにして、気怠そうに話す。
「え?」
「担当者」
「あー…」
尻尾巻いて逃げ出したとは言えない。
「今日はちょっと不在でして。それで飛鳥先生は今日はどちらに?」
「はぁ…」
うわ、なんか凄く不機嫌そう。
「俺」
「へ?」
「だから、俺」
そう言ったかと思えばまた奥の部屋に引っ込んでしまった。