君を思うと、胸がぎゅっと痛くて
8.私たちの世界、私たちの海
奏の家に帰ると、奥から陽菜とはる兄の笑い声が聞こえてきて、震えていた手にいつもの温度が戻った気がした。

なんで、あんなこと言っちゃったんだろ。
アキのこと、この世界にいる14歳のアキのこと、全部守りたくてなのに私にはそんな力は無くて。

「ただいまー」

「あ、さゆ! おかえり〜!!」

いつもの調子で陽菜が立ち上がりしがみついてくる。

「およ? アキ先生は?」

「帰った。奏、今日からアキ先生もうここに住まないって。荷物は今度運ぶって」

「やっとかよ。ハァー、あいつほんとにしつこかった」

「え、てか。奏会長とさゆは住んでるの?! ここに!?」

「うん、うち親とかほとんど家に居ないしなんか流れでさ。でも別に私たち、付き合ってるとかじゃないから」

ジロっと確かめるような瞳を一瞬私に向けたけど、陽菜は安心したように胸を撫で下ろした。

「はる兄、でもうら若き男女がひとつ屋根の下でね〜?」

「陽菜、その言い方すげえじじい臭いぞ」

「なにぃ」

陽菜ははる兄をポコポコ殴ってた。

「ごほごほっ」

「ほら、陽菜。まだ万全じゃないんだならもう帰るぞ」

背中をさすりながら、陽菜を促すはる兄。

「おい陽菜、8月の海にはみんなで楽しめるように身体大事にしろよ」

「うん。分かった。会長、さゆ、またね!」

「うん。お大事にね」

私たちは陽菜とはる兄を玄関まで送った。
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