色褪せぬ恋のポラロイド
次の日の朝、朝食が終わった後、静恵さんとわたしは奥様の部屋に呼ばれた。
「奥様、お呼びでしょうか?」
ノックをした後、奥様の部屋を覗くと、奥様がタンスを開けて着物を広げながら「あ、静恵、鈴。急に呼び出してごめんなさいね。」と言った。
「いえ、とんでもないです。」
「今日は慧吾の誕生日パーティーがあるでしょ?だから、2人にわたしの着物で申し訳ないけど、着ていく着物を選んでもらおうと思って。」
奥様の言葉に顔を見合わせ驚く、静恵さんとわたし。
「えっ?!奥様の着物を?!」
「そんな奥様の大切な着物をお借りするだなんて!汚してしまったら大変です!」
「いいのよ、気にしないで?」
そう言いながら、奥様は静恵さんとわたしに合いそうな着物を選んでくださった。
静恵さんには水色の着物を、わたしには白に桜柄が入った着物を選んでくださり、わたしたちは奥様の着物をお借りすることになった。
そして、いざ着てみると、良い着物はやはり着心地が違い、更に身も引き締まったような気がした。
「あら、2人とも良いじゃない!似合ってるわよ!」
「鈴、凄く綺麗!」
「静恵さんこそ!」
綺麗な着物にウキウキしながら、静恵さんとわたしは奥様の部屋をあとにした。
そして、自分の部屋に戻る途中、朝食に起きて来なかった寝坊助の慧吾様が部屋から出て来るのが見えた。
慧吾様は目を擦りながら部屋から出て来ると、わたしに気付き、ふとこちらを見た瞬間、眠気が吹き飛んだかのようにハッとした表情でわたしを見た。