色褪せぬ恋のポラロイド

それからわたしは、慧吾様が起きないようにそっと膝を抜き、枕に頭を置いて、布団を掛けた。

そして、ゆっくりと部屋から出て会場に戻ろうとすると、エレベーターがある方向から神城グループの代表取締役社長で神城家のご長男である真吾様が歩いて来た。

「鈴、慧吾を知らないか?」
「真吾様。慧吾様でしたら、お疲れになられて既にお部屋でお休みになられています。」
「全く、、、今日の主役が何やってるんだ。」
「昨日、ご帰国されたばかりですから、まだお疲れになられているんですよ。」
「鈴、今日もご苦労さん。そろそろ鈴も帰って休みなさい。下にタクシーを呼んであるから、静恵と一緒に帰宅するといい。」
「ありがとうございます。では、お先に失礼致します。」

わたしはそう言い、真吾様に一礼すると、エレベーターがある方へ向かい、1階へと下がった。

帰り支度をして外に出ると、既に静恵さんが待っていて、一緒にタクシーに乗り込むと神城家へ帰宅した。

「慧吾様、あの若さで写真展を開かれるまでになるだなんて凄いわよね!雑誌の取材がどんどん来そう!」

帰宅して、帯を外しながら静恵さんが言った。

「本当、凄いですよね。一人で留学されて、努力なされたんでしょうね。」

そう話しながら、静恵さんとわたしは奥様から借りた着物を脱いでいき、大切に衣桁に掛けておいた。

わたしも不慣れな会場での仕事に何だか疲れてしまい、布団に入るとすぐに眠りについた。

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