Music of Frontier
予備校の講師になってから、一週間がたった。





「…はぁ~…」

授業後、俺は職員室に戻って、ぐでーん、と自分のデスクに突っ伏した。

だらしないことは自覚しているが、許して欲しい。

すると、そこに。

「ルトリア?大丈夫?」

「あ…ベーシュさん…」

講師仲間のベーシュさんが、俺に声をかけてくれた。

「何か悩みごと?」

「…あぅ~…」

たった一週間で、こんな弱音を吐くのはみっともないのだけど。

「…俺…教師向いてないんでしょうかね…?」

「何で?」

「なんか…こう、生徒に小馬鹿にされてると言うか…遊ばれてると言うか…」

…あんなに、色々頑張ったのに。

「全然厳格な先生になれてない気がするんですよ」

「…ルトリアは、厳格な先生になりたかったの?」

「え?はい…」

「それは無理だよ。ルトリアには」

…うん。

この一週間で、俺には無理かな~と朧気ながら勘づいていたけど。

ここまではっきり言われてしまうと、悲しみのあまり咽び泣きたくなるよね。

そこは嘘でも、「大丈夫よ」と言って欲しかった。

これもベーシュさんの気遣いなのだと思おう。俺に下手な期待を抱かせない為の。

「…そんなに無理ですか?」

「ルトリアには向いてないよ」

…それ、生徒にも言われた。

ベーシュさんもそう思うの?

「やっぱり俺、教師向いてないんですね…」

「違う。教師じゃなくて、厳格な先生になりたいっていうのが無理なだけ。教師自体は向いてるよ」

…?

向いてる?俺が?

あんなに生徒に舐められてるのに?

「ルトリアは、根が優しいんだよ。だから人を怒るのに向いてないだけ。でも教え方は上手いから、教師には向いてると思う」

「…そうなんですかね…」

「うん。ルトリアの授業、生徒の間ではかなり評判良いみたいよ」

それは初耳。

「何ででしょう。緩いからですかね…?」

その…俺、怒るの下手くそらしいし。

「教え方が上手いからだよ。さっき言ったでしょ?ルトリアの指導、とても分かりやすいって生徒達が言ってた」

「…」

「私も教えてもらいたいくらいだよ」

「…」

ベーシュさんにそんなことを言ってもらうなんて。

明日の天気…斧かな…。
< 189 / 564 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop