Music of Frontier
俺達は、色々な話をした。

二人で、たくさん喋った。

出会ったばかりだったけど、俺達は最初から相性が良かった。

生まれも身分も違うのに、どうしてああ話が弾んだのか分からない。

今になって思えば…俺は多分、嬉しかったのだ。

今までずっと、自分が没落しかかった貴族の生まれであることをコンプレックスに思っていた。

だから、同年代の貴族の子女とはウマが合わなかった。

大体、奴らは俺を下に見て、いつも馬鹿にしてきたから。

同年代の人間で、俺を馬鹿にせず、見下しもせず、対等に話をしてくれた人はルトリアが初めてだった。

だから嬉しかった。

ルトリアは、本当に身分なんて気にしていないようだった。

大体そんなことを気にするのなら、皆の前でばくばくスイーツ食べたりしないだろう。

「ルトリアは何のお菓子が一番好きなんだ?」

俺がそう尋ねると、ルトリアは目をきらっ、と輝かせた。

なかなか良い質問だったようだ。

「そうですね~。どれも好きですけど…。どれか一つと言われると…。うーん…うーん…。そうだな…」

…凄く悩んでる。

そんなに絞りきれないのか。

「待ってくださいね。ちゃんと考えるので…」

「…いや、そんなに無理しなくて良いよ。一番が決められないなら、三つくらい答えても…」

「いえ!決めてみせます。ちょっと待ってください。俺はスイーツ男子と呼ばれるのは構いませんけど、優柔不断男子と呼ばれるのは嫌ですからね」

…。

「そうだな~…。うーん…。チョコか…。ケーキ…。いや、ケーキよりはクレープ…。…いや!やっぱりチョコ…」

「…チョコなのか?」

ファイナルアンサー?

「いや!待ってください。チョコと決めつけるのは時期尚早です」

「…」

そんなに深刻に考えるようなことなのか。それ。

別に、この答え如何で何か重要な決定をする訳じゃないんだから、気軽に答えてくれれば良かったんだけど。

めちゃくちゃ悩んじゃってる。なんか悪いことしたな。
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