Music of Frontier
しばし、真剣そうな顔で考えた後。

「…決めた!決めましたよルクシー」

「うん。何?」

「…プリンです」

「…あ、そう」

プリンか。チョコじゃなくて良かったのか。

「そういえばさっき、ポリバケツで食べたいって言ってたもんな」

「はい!夢なんですよ俺。プリンをポリバケツで食べること…。あっ、それと古今東西色々な種類のプリンを集めて、プリパしたいなぁ」

…プリパ?何だそれは。

「プリパって何?」

気軽に尋ねると、ルトリアは目を光らせて唾を飛ばした。

「あなた、プリパを知らないんですか!全く…まだまだ勉強が足りませんね?」

「??ごめん…?」

え?俺、謝るようなこと言った?

プリパって、そんな誰もが知ってるワードなの?

「プリパというのはですね、プリンパーティーの略称です」

「…プリンパーティー…?」

「そう!色んなプリンを食べ比べるパーティーです。いつかやりたいですね~。姉さんが駄目って言うから出来ないんですよ。俺は将来、いつか必ず、プリパを開催します。それが夢なんです」

うっとりと、夢を語ってくれるルトリア。

うん、用語解説ありがとう。そんなの知らなくて当然だ。

「やれば良いじゃん…」

安い夢だな、って言いそうになったよ。

「あっ!でもよく考えたら、チョコパも良いですね。アイパも良いかも」

「チョコパ…は分かるけど、アイパは何…?」

チョコパってのは、チョコレートパーティーだよな?

アイパのアイ…って何?

「アイスクリームですよ、アイスクリーム」

「あぁ、成程…。…アイスクリームは腹壊しそうだから、やめた方が良いと思う」

「え~…」

えーじゃなくて。

「大体、プリンもギリギリアウトじゃないか?食べ過ぎると腹壊すぞ」

「やだ!プリンはやです~!やるんです、パーティー」

「いや…気持ちは分かるけどさ…」

そんな子供みたいに駄々こねても。

それとも、好きなもの食べまくって腹壊すなら、本望なのか?

「じゃあルクシーと一緒にやりましょう。二人で半分こずつ食べたら、お腹壊さずに済みますよ、きっと」

名案!とばかりにぽんと手を打つルトリア。

「えー…。でも、俺そんなにプリン好きな訳じゃ…」

「大丈夫ですよ。今から好きになれば良いんです。きっと好きになれますよ。何せ俺の大好物ですからね」

何?その自信。

プリンには世界を変える力がある、とでも言わんばかりじゃないか。

「あのな、ルトリア。それは…」

俺が話しかけた、そのとき。

会場に置いてある、大きな柱時計が鳴り出した。

自分達が時間を忘れて話し込んでいたことに、そのときになって初めて気がついた。
< 78 / 564 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop