Music of Frontier
「あ…」

「…」

ようやく我に返ったときには、母と別れてから、既に一時間以上が経過していた。

…ヤバい。母さん、絶対に俺のこと探してる。

ただでさえ頭痛がするって言ってたのに、歩き回らせる訳にはいかない。

「…ルクシー?」

「…ごめん。ルトリア…俺、そろそろ…」

「…帰っちゃうんですか」

「…うん」

ルトリアは、しゅん、と悲しそうに俯いた。

申し訳なくて、いたたまれなくなった。

「…また、会いに来てくれます?」

「…また…」

「会いに来てください。きっと…。俺、待ってますから。プリン、用意して…。きっとですよ?」

お世辞で言ってるんじゃないことは、明らかだった。

ルトリアは、何かにすがるような目で、俺を見ていた。

お願いだから、この場でそう約束してくれ。

そう訴えかけてきていた。

「…分かった。今度、また会いに来るよ」

俺は、無意識にそう答えていた。

「本当に?約束ですよ?」

「うん。約束だ」

「良かった。待ってますからね」

ルトリアは嬉しそうに笑った。不思議と、俺も同じように笑っていた。

また会いに来よう。また、ルトリアと時間を忘れて話をしよう。

彼と、これっきり二度と会わないなんて嫌だった。

お互いはっきり確認した訳じゃないけど、俺達はもうこの時点で、友達…と呼べる関係になっていたのだろう。
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