Music of Frontier
あのまま、あの病院にいたら。

盲目な俺のままでいたら。

俺はきっと、あのまま腐っていっただろう。

少しずつ少しずつ、心の死が身体にも伝染するように、じわじわと死んでいったことだろう。

もし…絶望の中に深く沈み込んだ俺に、命綱を投げてくれる人がいなければ。

俺は、きっと死んでいた。

でも、そうはならなかった。

何故なら、俺にはまだ…残されていたからだ。

固く閉ざされた俺の瞼を、優しく開けてくれた人が。

また再び、光を見させてくれた人が。

俺が立ち上がるまで、手を伸ばし続けてくれた人がいたから。



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