パパになった航空自衛官は強がり双子ママに一途な愛をわからせたい
「オージさん、迷子ですか?」

 対戦相手からの挑発するような声が、無線から聞こえた。背後から、どんどん相手が近づいている。

 相手に背後を取られ、ミサイル射程距離に入ったら対空戦では〝負け〟だ。
 今、伊澄の乗る機体は、ミサイル射程距離までわずかしかない。

 それでも、伊澄がわざと相手に背後を許したのにはわけがある。

 伊澄はキャノピーに手を突き、背後を覗き込むように目視でその距離を見定めた。

「マック」

 清水に呼びかけ、その応答が聞こえた瞬間、伊澄は戦闘機のエンジンを切った。
 動力を無くしたFー15は、機体をくるくる回転させながら、みるみる海面に向かって墜ちてゆく。

 無線から、相手の慌てる声が聞こえた。相手からは、伊澄が突然真っ逆さまに墜ちていったように見えるだろう。
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