パパになった航空自衛官は強がり双子ママに一途な愛をわからせたい
 互いにじっと睨み合うような形になってしまったが、しばらくすると楠木さんはものすごく嫌そうな顔をして視線を逸らせた。

「だったら早く、そう彼に伝えてくださいよ。私たち、迷惑してるんです」

 その時、彼女の目元が夕日を反射してきらりと光った。だけどそれを隠すように上着の袖でぬぐった彼女は、もう一度私を睨んでから私に背を向けた。

「教えていただき、ありがとうございました」

 彼女の背にそう言って、頭を下げた。
 それから、素早くスマホを取り出す。

 今すぐ、彼に伝えなくては。だけど、この決意はきちんと、面と向かって伝えたい。

 私がメッセージを打っている間に、楠木さんは行ってしまった。私は打った文章を読み直し、彼に送信する。

【きちんと、お話したいことがあります。明日、お会いできないでしょうか?】

 当直が終わる頃に、彼がこれを見てくれますように。そう、願いを込める。

 振り向いた先の百里基地は、しんとしている。私はあそこから飛び立つ、伊澄さんが好きだ。

 伊澄さん、辞めるなんて言わないで。私が、強くなるから。

 吹いてきた十二月の冷たい風に決意を乗せて、彼に届けと祈った。
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