佐藤先輩と私(佐藤)が出会ったら
ピッ…………………………ピッ………………………ピッ……………………ピッ……………………



今日からは花音ちゃんから教えて貰った、フットワークをしている部員を一切見ることなく笛を拭き、部員のテーピングを次々としていくという技をやってみる。



磯貝さんはまだテーピングが出来ず、大量のドリンク作りと大量のゼッケンの準備をして貰っている。



「すげーな佐藤。
そのやり方は佐藤が・・・佐藤花音がやり始めた、うちの伝統の技。」



土屋先生が楽しそうに笑いながら登場し、私の近くにあるパイプ椅子に座った。



「足首や指、肩や膝だけじゃなくて腰とかまでテーピング出来るんだって?」



笛とテーピングを続けながら頷く。



「マネージャーとしても優秀じゃねーか。
昨日の記録もよく付けられてた。
2年と3年の名前も短時間でよく覚えてたな。
あの記録がないとシュートの確率やプレーの成功率が数字として出せなくなる。
プレーヤーとしても優秀だった分、今までのマネージャーとも違った視点で記録プラスαの活動日誌をありがとな、参考にさせて貰う。」



また笛を続けながら頷くと、昨日はテーピングをしなかった部員の順番になった。



"どこをテーピングする?”



笛を続けながら首を傾げると、その部員は急にバスパンを少し下ろして・・・



そして、ロンTまで捲り上げた。



それには驚き笛を吹くのを忘れてしまい・・・



「腰もテーピング出来るって聞いて。
腰お願いして良い?」



女子では有り得ない腹筋の割れ方、盛り上がり方・・・



女子とは全然違う肌の質感・・・。



何も言えない私に向けた大きな大きな背中・・・。



下げたバスパンの下にはパンツらしき物までチラッとだけど見えていて・・・。



それには、自分でも分かるくらいに顔が熱くなってくる。



顔だけではなく全身が熱くなってきて・・・。



「おいおい、大丈夫か?
男の身体見るの初めて?」



口からポロッと笛を落とし、目をギュッと瞑りながら土屋先生に何度も頷く。



「お父さんの裸とかも全然見たことない・・・。」



「分かった、足と指のテーピングだけ佐藤がやって。
後は俺がやるから。」



「すみません・・・。」



「いや、久しぶりに恥じらいのある女子高生の姿を見て逆に安心した。
最近の女子高生とかマセ過ぎてて怖えーもん。」



星野先輩みたいにからかってこない土屋先生にはめちゃくちゃ安心し、”30歳のオジサンとはいえめちゃくちゃイケメンの土屋先生は中身までイケメン・・・っっ"と思った時・・・



「佐藤、顔真っ赤だぞ!!!」



「耳まで真っ赤になってる、漫画かよ!!!」



「でも結構可愛い!!!」



「可愛い可愛い!!!」



「なのに竜也かよ!!!ってなる!!!」



「マジで竜也先輩。」



「女版竜也!!!」



「竜也がいなかったら”可愛い!!”になるはずなのに、竜也がいるから竜也にしか見えなくなる!!」



「こうなったらもう、おっぱい見せて貰うしかないっすね!!
おっぱいついてたら流石に竜也先輩に見えないっすもん!!」



「あーーー!!!お前、明日女バスのキャプテンにチクってやる!!!」



「やめてくださいやめてくださいっっ!!
俺が悪かったです!!!竜也先輩ごめ・・・・じゃなかった、佐藤ごめん!!!」



「おらっ、続きやるぞ!!!!」



ピッ



私ではなく土屋先生が笛を吹いてくれた。



私は両手で頬を隠しながら後ろを向き、深呼吸を繰り返す。



テーピングに並んでいる部員達がニヤニヤと笑っているのは視界に入ったけれど、それを無視して深呼吸を繰り返す。



"それなら守、お前セックス下手なの?”



”あ・・・・そっか、そういうことか。”



”えっ、そんなこと全然ないよ!?”



”この際だからハッキリ言った方が良いぞ?”



”本当に大丈夫だから〜・・・っっ”



今朝聞いてしまったそんな会話が今思い浮かんでしまった。



今日はそればかり考えていたからかもしれない。



"佐藤先輩、彼女とエッチしてたんだ・・・。”



"嫌だな・・・・・。”



そう思いながらも佐藤先輩が彼女とエッチをする姿を妄想してしまい、そして彼女ではなく私とそういうことをしてくれる所まで妄想してしまったからかもしれない。



私の妄想の中であんなにボヤケていた佐藤先輩が、少しだけハッキリとした・・・。



見たことがない佐藤先輩のお腹や背中にさっきの男子の身体が重なる・・・。



重なってしまって・・・。



何度も何度も深呼吸をしたけれど、顔の熱さも身体の熱さもなかなか引くことはなかった。



佐藤先輩の顔を直視することも出来ず、たまに私の方を見ているような佐藤先輩と目を合わせないようにしながら、必死にマネージャーとしての仕事をこなしていった。
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