佐藤先輩と私(佐藤)が出会ったら
それには固まる・・・。



いや、固まっている場合ではなくて・・・。



「佐藤先輩が高校に入ってからはあんまり関わることもなくなっちゃってるので、それはナイですよ。
それに私、”妹”というか"弟"みたいだし。
名前も晶とか、男の子みたいな名前だし。」



「いや、弟ではないよ、”妹"。
それに晶とか世界で1番可愛い名前じゃん。」



佐藤先輩は凄く凄く嬉しそうな顔でそう答えてから、少し不貞腐れたような顔で続けた。



「俺はこんなに愛してるのに、成長してきたらうちの”妹"もあんまり絡んでくれなくなったよね。
高校では階も違うし部活の時間も違うし、朝練だけは一緒に行って練習も少し付き合えて、昼練ではたまに会えて、たまに体育館ですれ違って・・・とか出来てたけど、最近はたまに家の近くのコンビニとかで会えたら立ち話するとか、たまに晶の家に行って晶の家のハムスターにオヤツを差し入れする口実で晶に会うとか、そのくらいしか出来なくなって。
怪我のことで俺はめちゃくちゃ心配してたのに晶は全然頼ってくれなくてなぁぁぁぁ・・・・、そういえばその時の彼女がアレだ、5日で振ってきた彼女だ。
確かにその時は晶の話ばっかりしてたけど、でも怪我の心配をしてただけだし、別れ話の時も彼女からそんな話されたこともないよ?」



「・・・・へぇ、そうなんだ。
よし、俺らは帰るか。」



「え、いいの・・・?なんか・・・」



「いや、いい。
こういうのは周りはどうにも出来ないやつだから時間の無駄。」



「ぁ・・・・っ、晶先輩!!
お先に失礼します!!!」



「うん、今日もありがとね。」



「晶先輩に"ありがとう"って・・・・っっ今日も感謝をしていただいて・・・・・っっ」



「分かった分かった、後で聞くから。」



ラブラブというよりは仲の良い兄妹みたいな2人の後ろ姿を見ながら、”こういうカップル、良いな"と思った。



佐藤先輩が彼女と一緒にいる所を見ても、不思議と”佐藤先輩の彼女になりたいな"とか、”佐藤先輩と付き合えたら・・・"みたいなことを思ったことがなかったのに、あの2人の後ろ姿を見て初めて思った。



「いいなぁ・・・、私も付き合いたいなぁ・・・。」



磯貝さんの後ろ姿には自分を、そして磯貝さんの彼氏の後ろ姿には佐藤先輩を重ねながら呟いた。



そして・・・



「エッチ・・・、したいなぁ・・・。」



そんなことまで無意識に口から出てきて、それにはめちゃくちゃ慌てながら両手で口をおさえた。



顔も耳も熱くなってきて・・・、それだけではなくて、身体中がどんどん熱くなってきた。



言い訳の言葉が何も思い浮かばない中、自分の心臓の音が聞こえてきて・・・



「晶にはまだまだ早いよ。」



佐藤先輩の低い声・・・、やけに低くて冷たい声を聞き、下を向きながらギュッと目を閉じた。



そしたら、見えた。



妄想の中の佐藤先輩が優い顔で笑いながら私に手を伸ばしてくれている姿が。



今日1日、何度も何度も何度も見てしまったそんな妄想を今また見てしまって・・・。



「ちょっと思ってみただけです・・・。」



「思うだけでもまだまだ早いよ。」



「思うくらいなら良いじゃないですか・・・。
私、もう高校2年生だし・・・。
そういうことをしてる子はもうしてるし・・・。」



「いや、思うだけじゃなくて声にも出てたし。」



「間違えて言っちゃっただけです・・・。」



「そういうこと、言わない方が良いよ。
そういうことを言われると男も空気読んでやらないといけなくなるし。」



「彼女さん達とはそんな感じでしたんですか?」



「・・・・・まあ、そんな流れ。」



「佐藤先輩だって佐藤先輩の彼女さん達だって、高校生なのにエッチしてるじゃないですか。」



「いや、でも晶にはまだまだ早すぎてダメ。
兄貴の俺としては、晶は結婚してからじゃないとダメなやつだ。
・・・・・いや、やっぱり結婚してからでもダメかも。」



「それはもう意味分かんないです!!」



無理矢理にでも笑い、男子更衣室を指差した。



「寒くなってきたので早く着替えてきてください!!」



「確かに、今日ちょっと寒いね。」



佐藤先輩が頷き、手に持っていた自分のジャージの上着を私の胸に押し付けてきた。



それにはドキッとして・・・。



「これ着て待ってて。」



そう言われたけれど、その上着をなかなか受け取れなくて。



一旦引けていた熱がまた一瞬で戻ってきた。



「佐藤先輩・・・・胸・・・・・・。」



「胸?」



「手・・・・・、胸・・・・・に、当たってるので・・・・。」
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