佐藤先輩と私(佐藤)が出会ったら
「お腹いっぱい・・・。」



トイレから出て手を洗っていると、自然とその言葉が出てきた。
ここのお店は飲み物もご飯も特大サイズみたいなお店で、慎也も私も後で気付いたけれど他のお客さん達は分け合って食べている人達ばかりだった。



「久しぶりに動いてお腹が空いてたけどもう食べられない・・・。
お母さんの夜ご飯も食べられるかなぁ・・・。」



トイレの鏡に映る自分のことを眺めながらそう言って、汗でピョンッとなってしまった右側の髪の毛を自分で触った。



「あ、手・・・濡れてたんだった。」



濡れた手で触ったピョンッは、もっとピョンッとしてしまった。



直しようがないのでそのまま席に戻ると・・・



「ぇ・・・?」



慎也がいる席には慎也と同じ制服を着ている男子がもう1人増えていた。
それは後から来るはずの柳瀬君ではなく、佐藤先輩で・・・。



慎也の向かい側、私がさっきまで座っていた席に佐藤先輩が座っていた。



「あの・・・どうしたんですか?」



恐る恐る佐藤先輩に聞くと、作ったようなニコッという笑顔で慎也に笑っていた佐藤先輩は、その笑顔のまま私のことを見てきた。



そして、すぐにソファーから立ち上がって私のことを奥に押し込んできた。



「あの・・・何で・・・?
高速下のバスケはお断りしましたよね?」



「うん、だからデートの話し合いに俺も来ちゃった。
どこに行くことになったの?動物園?」



「そうですけど・・・、でも・・・これ、必要以上のやつ・・・。」



「ああ、大丈夫。」



佐藤先輩が作ったようなニコッという笑顔で、私のことを見ることなくメニューを見下しながら口を開いた。



「彼女とはさっき別れた。」



「え・・・・?」



「教室で待ってたからすぐに話せて良かったよ。」



「マジっすか・・・。
お兄さん、ヒマリ先輩と別れちゃったんっすか・・・。」



「だから、さっきも言ったけど”お兄さん"ってやめてね。
俺、キミの”お兄さん"でも何でもないからね。」



佐藤先輩がヒマリさんと別れたことに残念そうな声を出している慎也に対してではなく、佐藤先輩が何でか”お兄さん"の部分を気にしている。



佐藤先輩がパタンッとメニューを閉じると、私のことを真っ直ぐと見た。



「俺、悔いが残らないように青春をすることにした。」



「はい・・・。」



「だからヒマリと別れたから。」



「そう・・・なんですか?」



「うん、だから俺の試合・・・絶対に応援に来て欲しい。
俺、めちゃくちゃ格好良い所を見せるから。
晶の自慢の”お兄ちゃん"として、コートの中で1番格好良い姿を見せるから・・・。」



佐藤先輩が泣きそうな顔で言ってくる。



「星野君が姉ちゃんにやったみたいに、俺も晶の首に金メダルを掛けたい。」
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