佐藤先輩と私(佐藤)が出会ったら
「生まれた時から格好良くて、バスケについてはお前よりも天才ガードだった俺が言うから間違いない。」
土屋先生がそんな自慢話みたいな言い方をした、かと思ったら・・・
「俺にとって学校っていう場所はマジでしんどい場所で。
中学の時なんて捻挫は治ったのにしんどすぎて体育館に戻れなかった日が続いたくらいだった。
体育館の前でバスケのボールの音とバッシュの音を聞きながら突っ立ってた時、アホみたいな顔でアホみたいな言葉で俺に声を掛けてきたのは優奈(ゆうな)の兄貴だった。
クラス替えをしたばっかりで話したこともない奴で、俺はそいつのことを覚えてもいなかった。
でもそいつは俺の名前を知ってて、体育館前で突っ立ってた俺に声まで掛けてきた。
そんなあいつの家にいたのは、ランドセルを背負ったちっこい優奈だった。
俺にチュッパチャプスを渡してきてさ、なんか可愛すぎて初めて誰かの前で泣いた。
子どもってマジで可愛いんだよな、勝手に涙が出るくらいに可愛い。」
今度はそんな話を始めた土屋先生が、ポケットから何かを取り出したのが視界の隅に見えた。
チラッとそれを確認すると、土屋先生はチュッパチャプスを持っていた。
「学校ってさ、特別な場所なんだよ。」
顔を上げることはない佐藤先輩に土屋先生は話し続ける。
「ガキだけが来ることが出来る、すげー特別な場所。」
「・・・・・・・・・。」
「俺は小学校も中学校も高校も”早く終われ"と思いながら過ごしてた。
こんな場所、これっぽっちも楽しいなんて思ったこともなかった。
でも・・・」
「・・・・・・・・・・。」
「大学に入ってから気付いた。
大学と"学校”があまりにも違い過ぎたから。」
「・・・・・・・・・・。」
「学校なんて、そこら辺に住んでる奴らが勝手に集められて、勝手にクラスっていうのを決められて、出席番号だかクジだかで席まで決まって、代わる代わる先公が何やら話してきて。」
「・・・・・・・・・・。」
「喋ったこともない奴も俺の名前を知っていて、俺が死ぬほどしんどいと思っていた時に声を掛けてくれる奴もいた、すげー場所だったんだなって、大人になってからやっと気付いた。」
「・・・・・・・・・・。」
「一生の友達と出会えるかもしれない、一生の思い出が出来るかもしれない、一生やりたいと思えるモノが見付かるかもしれない。
学校っていうのは、そういう場所だった。」
「・・・・・・・・・・。」
「頭がおかしくなって死ぬと思うくらい愛した女と出会えるキッカケにもなった、すげー特別な場所だった。」
「・・・・・・・・・。」
「俺は学校に忘れ物をしすぎた。
だから大人になってから学校に取りに戻ってきた。
それからは毎日すげー楽しく学校に通ってるよ。
子どもが生まれたと分かってもすぐには駆け付けられず、入園式も卒園式も入学式にも出席出来ず、お遊戯会も運動会も行ったことがない、日曜日の午後にたまに近場に出掛けることくらいしか出来ない失格な"パパ”が、毎日こうやってお前らと楽しく学校生活を送らせて貰ってるよ。」
「・・・・・・・・。」
「忘れ物を1つもするなとは言わねー。
でも・・・」
「・・・・・・・・。」
「デカくて大切な忘れ物だけは絶対にするな、竜也。」
「・・・・・・・・。」
「デカくて大切な忘れ物だと、二度と取りには戻れない。」
「・・・・・・・・。」
「二度とこの瞬間には戻れない。」
「・・・・・・・・。」
「あとは1秒ずつ大人に近付いていくだけ。
こうやって1秒ずつ、お前らがガキでいられる時間が終わっていくだけ。」
「・・・・・・・・。」
「もう1クォーターが終わるぞ、早いだろ。」
「・・・・・・・。」
「大人の俺からしてみたら、ガキだった時間なんてこれくらいの感覚だったよ。」
「・・・・・・・・。」
土屋先生がソッと佐藤先輩の背中に手を添えた。
「竜也、遅くなったな。お前遅すぎだろ。
どんなチ◯コしてたらこんなことになるんだよ。」
「・・・・・・・・。」
「でも、まだお前の青春の時間は残ってる。」
「・・・・・・・・。」
「下なんか向くな、しっかり顔上げてろ。
・・・・・・お前、可愛い顔しやがってな〜。
俺別にそっちの顔でも良かったから交換してやりてーよ。
俺のこの顔があればマジでどんな女でも余裕なんだけどな。」
「・・・・・・・・っ。」
泣きながら笑った佐藤先輩の背中を土屋先生が強めに叩いた。
「最後の1クォーター、ブザーが鳴るその瞬間まで諦めるなよ。
俺が何の為に色んな場所からのロングシュートをさせてると思ってるんだよ。」
「入りますかね・・・。」
「・・・・・いや、俺からは何とも。
お前、顔がなぁ〜・・・。」
「それ、俺も数日前からもっと死にたくなってるやつだからマジでやめて・・・っっ」
「まあ、頑張れ!!!
俺みたいな奴に目をつけられたら、マジで明日にはマ◯コだけは大人になってることだってあるからな!?」
「・・・・・・・・・っっ。」
「これは今年も優勝は出来ねーかぁぁぁ。
顧問としては平和な青春で終わらせて欲しいけど、先公としては"頑張れ!!”って言うしかねーもん。
今年はいけると思ったんだけど無理だったかぁぁぁ。」
「・・・・・勝手に結果を決めないでくださいよ。」
「じゃあ、1日でも早くうちのガードに戻ってこい。
それまではお前、1年と外周な。」
土屋先生がそう言い終わった瞬間、1クォーターが終わるブザーが鳴った。
土屋先生がそんな自慢話みたいな言い方をした、かと思ったら・・・
「俺にとって学校っていう場所はマジでしんどい場所で。
中学の時なんて捻挫は治ったのにしんどすぎて体育館に戻れなかった日が続いたくらいだった。
体育館の前でバスケのボールの音とバッシュの音を聞きながら突っ立ってた時、アホみたいな顔でアホみたいな言葉で俺に声を掛けてきたのは優奈(ゆうな)の兄貴だった。
クラス替えをしたばっかりで話したこともない奴で、俺はそいつのことを覚えてもいなかった。
でもそいつは俺の名前を知ってて、体育館前で突っ立ってた俺に声まで掛けてきた。
そんなあいつの家にいたのは、ランドセルを背負ったちっこい優奈だった。
俺にチュッパチャプスを渡してきてさ、なんか可愛すぎて初めて誰かの前で泣いた。
子どもってマジで可愛いんだよな、勝手に涙が出るくらいに可愛い。」
今度はそんな話を始めた土屋先生が、ポケットから何かを取り出したのが視界の隅に見えた。
チラッとそれを確認すると、土屋先生はチュッパチャプスを持っていた。
「学校ってさ、特別な場所なんだよ。」
顔を上げることはない佐藤先輩に土屋先生は話し続ける。
「ガキだけが来ることが出来る、すげー特別な場所。」
「・・・・・・・・・。」
「俺は小学校も中学校も高校も”早く終われ"と思いながら過ごしてた。
こんな場所、これっぽっちも楽しいなんて思ったこともなかった。
でも・・・」
「・・・・・・・・・・。」
「大学に入ってから気付いた。
大学と"学校”があまりにも違い過ぎたから。」
「・・・・・・・・・・。」
「学校なんて、そこら辺に住んでる奴らが勝手に集められて、勝手にクラスっていうのを決められて、出席番号だかクジだかで席まで決まって、代わる代わる先公が何やら話してきて。」
「・・・・・・・・・・。」
「喋ったこともない奴も俺の名前を知っていて、俺が死ぬほどしんどいと思っていた時に声を掛けてくれる奴もいた、すげー場所だったんだなって、大人になってからやっと気付いた。」
「・・・・・・・・・・。」
「一生の友達と出会えるかもしれない、一生の思い出が出来るかもしれない、一生やりたいと思えるモノが見付かるかもしれない。
学校っていうのは、そういう場所だった。」
「・・・・・・・・・・。」
「頭がおかしくなって死ぬと思うくらい愛した女と出会えるキッカケにもなった、すげー特別な場所だった。」
「・・・・・・・・・。」
「俺は学校に忘れ物をしすぎた。
だから大人になってから学校に取りに戻ってきた。
それからは毎日すげー楽しく学校に通ってるよ。
子どもが生まれたと分かってもすぐには駆け付けられず、入園式も卒園式も入学式にも出席出来ず、お遊戯会も運動会も行ったことがない、日曜日の午後にたまに近場に出掛けることくらいしか出来ない失格な"パパ”が、毎日こうやってお前らと楽しく学校生活を送らせて貰ってるよ。」
「・・・・・・・・。」
「忘れ物を1つもするなとは言わねー。
でも・・・」
「・・・・・・・・。」
「デカくて大切な忘れ物だけは絶対にするな、竜也。」
「・・・・・・・・。」
「デカくて大切な忘れ物だと、二度と取りには戻れない。」
「・・・・・・・・。」
「二度とこの瞬間には戻れない。」
「・・・・・・・・。」
「あとは1秒ずつ大人に近付いていくだけ。
こうやって1秒ずつ、お前らがガキでいられる時間が終わっていくだけ。」
「・・・・・・・・。」
「もう1クォーターが終わるぞ、早いだろ。」
「・・・・・・・。」
「大人の俺からしてみたら、ガキだった時間なんてこれくらいの感覚だったよ。」
「・・・・・・・・。」
土屋先生がソッと佐藤先輩の背中に手を添えた。
「竜也、遅くなったな。お前遅すぎだろ。
どんなチ◯コしてたらこんなことになるんだよ。」
「・・・・・・・・。」
「でも、まだお前の青春の時間は残ってる。」
「・・・・・・・・。」
「下なんか向くな、しっかり顔上げてろ。
・・・・・・お前、可愛い顔しやがってな〜。
俺別にそっちの顔でも良かったから交換してやりてーよ。
俺のこの顔があればマジでどんな女でも余裕なんだけどな。」
「・・・・・・・・っ。」
泣きながら笑った佐藤先輩の背中を土屋先生が強めに叩いた。
「最後の1クォーター、ブザーが鳴るその瞬間まで諦めるなよ。
俺が何の為に色んな場所からのロングシュートをさせてると思ってるんだよ。」
「入りますかね・・・。」
「・・・・・いや、俺からは何とも。
お前、顔がなぁ〜・・・。」
「それ、俺も数日前からもっと死にたくなってるやつだからマジでやめて・・・っっ」
「まあ、頑張れ!!!
俺みたいな奴に目をつけられたら、マジで明日にはマ◯コだけは大人になってることだってあるからな!?」
「・・・・・・・・・っっ。」
「これは今年も優勝は出来ねーかぁぁぁ。
顧問としては平和な青春で終わらせて欲しいけど、先公としては"頑張れ!!”って言うしかねーもん。
今年はいけると思ったんだけど無理だったかぁぁぁ。」
「・・・・・勝手に結果を決めないでくださいよ。」
「じゃあ、1日でも早くうちのガードに戻ってこい。
それまではお前、1年と外周な。」
土屋先生がそう言い終わった瞬間、1クォーターが終わるブザーが鳴った。