DEAR 2nd 〜Life〜
「───…あ…さおかさん……?」
簡単に動揺を隠せず戸惑うあたしに───…。
「………これ………
大事なもんとちゃうんか…?」
朝岡さんはそう言い、
確認するかのように、固く握り締められているあたしの手をほどいた。
「……………」
─────ザァッ……
波が止まることなく寄せては返し、
夕陽が空を一段と赤く染め、
手のひらにはただ、アメジストが光る。
───そして、
そんな溜め息が出るような世界をあたしは涙で濡らす。
「………うん……」
───大事だよ。
とても大事。
だってこれは人生の御守り。
弱いあたしに光を与えて、道標をくれたの。
これに何回救われたか分からない、小さな救世主……。
「…………」
───だけど見るたび苦しいから。
見るたび罪だけが増えるから。
あなたに関するものを見れば見る程、苦しくて苦しくてもがいてしまう。
そう、そして
漠然と過ぎ行く時の流れに、無常に切なさを感じる。
───そう……。
これが“失恋”っていう気持ちなのね。
これが“後悔”っていう気持ちなのね。
初めて味わうよ。
初めて思い知らされるの。
本当にあなたが好きだったんだって……
ねぇ、だから簡単に全てを忘れられないんだね。
「……大事なもんなら持っとき?
捨てる事が正解じゃない。
何もかも捨てても、あとに後悔だけ残っても仕方ないから……。」
────キュッ……。
朝岡さんは微笑み、あたしの手をまたそっと閉じた。